2022年6月25日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年6月20日

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SHINSUKE HONDA

 「人手不足で本当に困っている。コロナ禍を経て、外国人労働者が『なくてはならない存在』であることを強く実感した」

 鰹節の生産量日本一を誇る鹿児島県枕崎市で水産加工業を営むある経営者は小誌の取材にこう答えた。

 新型コロナウイルスが感染拡大する以前、同社は技能実習生(以下、実習生)など外国人労働者9人を含む、15人の社員で鰹節製造を行っていた。だが、日本政府が「水際対策」を導入し実習生の新規入国が停止したことで、社員数が10人にまで減少。「生産量を落とすなどして、現有戦力で何とか凌ぐしかなかった。3K職種ともいわれる鰹節製造の職場は、地元でも人気がなくなっている。求人を募集しても日本人の労働者が集まらないのが現状だ」と苦しい胸の内を明かす。

 技能実習制度は本来、途上国への技術移転などを通し、経済発展を担う「人づくり」に日本が協力することを目的とした制度である。しかし、いつの間にか元々の趣旨がすり替わり、実習生が労働力需給を調整する存在、つまり、〝人手不足の穴埋め〟として使われていることが常態化しているのだ。これは制度が生んだ矛盾の帰結ともいえるだろう。

 日本はこれまで、移民は受け入れないことを掲げ、「途上国への技術供与」「専門的・技術的分野の外国人材受け入れ」「留学生30万人計画」などという聞こえがいい建前を巧妙に使いながら、なし崩し的に外国人労働者の受け入れを拡大してきた。コロナ禍で外国人労働者の入国がストップしたことで、彼らに依存していた日本社会の脆弱性が図らずしも露呈することとなる。

 人口経済学が専門の明治大学政治経済学部の加藤久和教授は、「外国人労働者の入国が制限されたからこそ、〝人手不足〟という社会課題に真剣に向き合う絶好のチャンスだった。しかし、日本政府や日本企業は人手不足であることを嘆き続けるばかりで、外国人労働者に依存する環境がそのまま残存してしまっている」と指摘する。

 では、本当に日本社会に働き手はいないのだろうか?

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