聞き手/構成・編集部 川崎隆司

編集部(以下、―─)「人を大切にする経営学」とはどのような学問なのか。
坂本 「経済学」が世の中を〝知る〟ための学問だとすれば、「経営学」は〝実践する〟学問だ。決して本や机上だけでは完結せず、最前線である企業の経営現場で成功したミクロの事例を集めて体系化することで「理論」と呼べるものが見えてくる。20年以上の長きにわたって約8000社もの日本企業を訪問した中で、長く優良経営を続けている企業に共通していたのが「人を大切にする」という経営姿勢だった。
──大切にする「人」に優先順位はあるか。
坂本 私は多くの経営者に「ES(従業員満足)なくして、CS(顧客満足)なし」と伝えてきた。まずは自社の「社員とその家族」を大切にする。そうすることで彼らは仕事にやりがいを見出し、一生懸命に「顧客」のために働く。顧客が満足すれば売り上げが上がり、その一部を、最後に「株主」へと還元できる。この順番を間違えてはいけない。
「周囲の人を幸せにする」という目的を見失わなければ、利益や名声は後からついてくる。
──長く続く企業と、そうでない企業の違いは。
◇◆◇ この続きを読む(有料) ◇◆◇
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。
日本企業の“保守的経営”が際立ち、先進国唯一ともいえる異常事態が続く。人材や設備への投資を怠り、価格転嫁せずに安売りを続け、従業員給与も上昇しない。また、ロスジェネ世代は明るい展望も見出せず、高齢化も進む……。「人をすり減らす」経営はもう限界だ。経営者は自身の決断が国民生活ひいては、日本経済の再生にもつながることを自覚し、一歩前に踏み出すときだ。