2024年12月23日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2021年10月29日

 岸田文雄政権の「新しい資本主義」は分配に重点を置いたものになると思っていたら、いつのまにか日本が成長していないという話で盛り上がっているようだ。

 1990年から日本の給料(物価上昇の影響を取り除いた実質の給料である)が横ばいなのに、アメリカをはじめとした世界の先進国の給料は順調に上がっているグラフをさんざん見せられたら、やはり成長が大事だという気になってくる。なぜ、上がらないのか、上げるためにはどうしたらよいのだろうか。

(metamorworks/gettyimages)

成長戦略や構造改革で給料は上がるのか

 岸田内閣で「新しい資本主義」を扱うのは、その名の通りの「新しい資本主義実現会議」で、半年くらいで答えを見つけないといけないらしい。しかし、1990年からこれまで30年間、日本は成長をしなかったのだから、そう簡単に答えは見つからない。

 分配も、別に小泉純一郎内閣の新自由主義で悪化した訳ではなく、高度成長が終わってから、徐々に格差が拡大してきただけだ。この原因を、多くの経済学者は高齢化によるとしている。初任給はあまり変わらないが、その後の努力と運でだんだんと格差が開く。同一年齢層での格差は高齢者ほど大きいから、高齢化すればどうしても格差が拡大するというのである(大竹文雄『日本の不平等-格差社会の幻想と未来』日本経済新聞社、2005年)。

 これを仕方がないことと考えると、問題は正社員になれた若者と非正規になってしまった若者の格差だ。小泉内閣の派遣労働への規制緩和のせいだという人が多いのだが、非正規の若者が増えたのは90年以降のことだ。不景気で企業が新入社員を取らず、やむなく若者が非正規の職に就いたのだ。就職氷河期とは不景気の時の話だ。

 アベノミクスで金融緩和をしていた時期は成長率がわずかながら高まって、雇用が大きく改善し、正規の職員が増加した。まずこれを続けることが必要だ。ただし、これだけでは不十分だから、より高い成長のためには、構造改革や成長戦略が大事だとなるのだが、具体的に何をするのかは一向に分からない。


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