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2021年10月27日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

新潟県立大学国際経済学部教授

1952年生まれ。東京大学法学部卒。日本興業銀行入行。パリ興銀社長、みずほ総合研究所チーフエコノミスト、経済産業研究所理事長などを経て2020年4月から現職。主な著書に『大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む』(日本経済新聞出版社)。
 

岸田政権が「成長と分配」の実現として掲げた「新しい資本主義」。「Wedge」2021年10月号の特集「人をすり減らす経営はもうやめよう」では、人材や設備への投資を怠り、価格転嫁できずに安売りを続け、給与も上昇しない日本企業の現状と必要な「決断」を検証しました。ここでは、記事内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
イラストレーション=Malte Mueller/Gettyimages

 コロナ禍にあって企業業績の明暗が大きく分かれている。一方では、世界経済回復や巣ごもり需要などが寄与して、自動車や情報通信、住宅関連などの業種で最高益更新の企業が続出している。しかし、人々の新型コロナ感染への警戒や長引く行動規制で、飲食店や宿泊業、航空をはじめとする運輸業界など厳しい経営を強いられている企業や業種も多い。

 この状況は他の主要国でも共通している。ところが、今回のコロナ禍では、米国企業などと比べて低い利益率や設備投資の鈍い回復など、日本企業の抱える課題が一段と鮮明になった。

 コロナ禍にあっても米国企業の収益力や設備投資の伸びが日本企業を上回る要因はある。その一つは、米国が中小企業とその雇用維持のための企業給付金(約110兆円)、法人税・所得税の大幅減税(約30兆円)、失業保険の追加給付(30兆円超)、3度にわたる個人給付金など、日本を大きく超える規模の企業・家計支援策を実行していることである。また、米国産業では、コロナ禍が一段と需要を高め、最高益を更新しているGAFAなどの情報関連産業のウエートが高いこともある。

 しかし、日本企業の 〝超保守的な経営姿勢〟を見逃すことはできない。部門別の収支差を示す貯蓄投資バランスで日米を比較すると、米国の企業部門は、リーマンショックでは大きな貯蓄超過すなわち支出が収入を下回る状態となるも、その後の景気回復に合わせて着実に投資などの支出を回復させている。しかし、日本の企業部門では、危機が過ぎて景気が回復しても大きな貯蓄超過が続いている(図1)。

 多くの日本企業が手堅いと思っている経営姿勢は、国際的に見れば〝進取〟と〝積極性〟に乏しい経営である。日米企業ともに、経済危機に際して「縮み志向」となることに変わりはなく、今回のコロナ禍でも投資の圧縮など同様の動きが生じた。しかし、その後の展開が大きく異なる。足元の状況を見ても、欧米主要国では設備投資が回復し、賃金も上昇しているが、日本では両方とも伸びは鈍い。

 稼ぎを設備や人材の投資に回さなければ、長期的には生産性向上やイノベーションが起きにくくなり、人材の活用や高度化も進みにくくなる。当然、帰結として米国企業は収益力と業容が拡大し続け、日本企業では低収益と業容停滞が続くこととなる。

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