9月2日、小雨交じりで肌寒さも感じられる中、東京・九段下にあるビルの一室は、早朝から熱気にあふれていた。
就職氷河期世代をメインターゲットに非正規社員から正社員を目指すための5日間の集中プログラム「就活エクスプレス」(東京都主催、東京しごとセンター運営、30歳~54歳まで参加可能)は4日目、企業の人事担当者との交流会を迎えていた。
参加者の中心は30代後半から40代前半。4人1組で3班に分かれて、この日交流会に参加する人事担当者にどんな質問をするか話し合う。
「ホームページを見ると新卒採用のことしか書いていないけれど、中途採用についてはどうなっているんだろう」「コロナで仕事がなくなってしまったので、会社の業績が気になる」──。参加者からはさまざまな声が聞こえてくる。
班員それぞれが、一人ひとりの声にしっかりと耳を傾け、答えを返す様子からは強い仲間意識が感じられる。ファシリテーターとしてこのプログラムの企画・進行をする東京しごとセンターのスタッフは「就活は一人でするものではない。非正規社員として長く働いてきた人には、その経歴に自信を持てずにいるが、他者と話すことで『そんな経験(スキル)があるの? すごい』などと言ってもらうことで自分では気がつかなかった〝強み〟に気付くことになる」と話す。
30分の事前ミーティングが終わると、本番の交流会が始まる。参加者それぞれが、必ず1問は質問しなければならない。1社30分で、3社との交流会が行われる。人事担当者の会社説明が終わると、受講者の質問が始まる。「未経験でも大丈夫か?」「転職回数が多いが、マイナス評価になるのか?」「中高年の採用はどうなっているのか?」などといった質問が飛ぶ。
人事担当者からは「スキルを必要とする仕事では未経験では厳しい」「年齢が上がると、家族構成が気になる。特に未経験者だと家族を養うほどの給与を出すことはできない」などといったシビアな回答が返ってくる。
交流会を終えた40代の女性に話を聞いた。「これまで8~9社転職してきた。大学卒業後は、正社員に就くことができたが、その後は、派遣社員として働いてきた。このプログラムに参加した直接の原因は、コロナの影響で派遣先が部署ごとなくなってしまったから。最初は、もともと肌に合っていない職場だったし、仕方ないかと思っていたが、ここまでコロナの影響が長引くとは思わなかった」。
ただ、プログラムに参加したことで、新しい一歩を踏み出す決断もついたという。「これまで事務職として働いてきたが、参加者同士でコミュニケーションをとるなかで、事務以外の仕事でもできるかもしれないと思えるようになった」。