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2021年10月21日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 総選挙が公示され、秋口の自民党総裁選をめぐる動きから始まった〝政治の季節〟は大詰めのクライマックスを迎える。各党は英知を絞った公約を掲げ、まなじりを決して活発な論戦を交わしている。しかし、相変わらずの各論重視、与野党の応酬も目先の問題ばかりといっていい。

 むろんそれなりに重要な政策課題であり、真剣に議論しているのはわかる。だが、日本の転換期にあって、有権者が聞きたいことは、それだけではない。「日本国の将来」のかたちについて政治家による真剣勝負こそ、有権者が最も望むところだろう。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

男女差別意識しなかった故森山女史

 仰けから横道にそれるが、公示前日の18日、 日本記者クラブでの総選挙恒例の党首討論が終わった直後、NHKニュースで訃報が伝えられた。森山真弓さんが93歳でなくなった。平成元年(1989年)、自民党の海部俊樹内閣で女性初の官房長官をつとめた元衆院議員だ。

 森山女史の話を持ち出したのは、今度の総選挙論戦で、夫婦別姓、LGBTなど、〝多様性〟の問題が焦点になっているからだ。

 与野党の論戦を冷笑するつもりは毛頭ないが、森山さんなら、「そんなに熱くならなくても……」と苦笑いしているかもしれない。30年以上も前に、これだけ重要ポストに就いたのだから、当時ですら能力、実力があれば、性別など関係ないことを森山さんははっきりと示したというべきだろう。

 女史はたしかに、法相時代(小泉内閣)、夫婦別姓の法改正に取り組むなど女性の社会進出促進に熱心だった。しかし、官房長官時代は女性を意識しているところはつゆほども感じられなかった。

 「自分がこのポストについたのは適任だからだ」と自信をみなぎらせ、ごく自然に困難な職をこなしていた。「女性だから・・」などと気負ったり、愚痴めいたことを言ったりしたことは、聞いたことがない。

 最近、大組織のトップに就任した女性が、「ガラスの天井を打ち破るチャンスと考えて」受諾を決断したと語っていた。立派な決意だが、森山さんに、そんな気負いはさらさらなかったろう。

「多様性」主張なら社会の将来像議論を

 夫婦別姓やLGBTは当事者だけではなく、国民全体にとって重要な問題だ。しかし、誤解、批判を恐れずに言えば、短期決戦の選挙の場でシロクロつける問題ではないように思う。

 当事者はもとより、国民の多くが「これならいい」と納得するよう、じっくり時間をかけるべきではないのか。早急に、しかも選挙争点にして結論を出すと禍根を残す。望まない結論を強いられた当事者がかえって不利な扱いや、いやがらせを受けたり、逆効果を生むことにならないか。

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