〝便利で安いニッポン〟
外国人労働者は好都合
総務省によると、15~64歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない無業者数は244万人いる。また、内閣府男女共同参画局は、日本は米国やドイツ、スウェーデンなどの諸外国と比較し、25~45歳の女性労働力率が落ちる「M字カーブ」の状態が深刻であると訴える。もちろん、何らかの事情で働きたいのに働けない人がいるのは事実である。だが、誤解を恐れずに踏み込んで言えば、今の日本社会や日本企業にとっては、人件費が高く、労働者としての権利意識も強い日本人よりも、外国人労働者を雇う方が、〝便利で安いニッポン〟を維持するには好都合なのだ。
経営学者で人を大切にする経営学会の坂本光司会長は、「高齢者や女性、障害者など、社会で活躍できる人たちを生かす努力が十分になされないままに、外国人労働者にやりたくない仕事を押し付けて成り立っている日本は〝砂上の楼閣〟だ」と指摘する。
6月1日より、政府の水際対策は緩和された。外国人労働者の流入は「何事もなかった」かのように再開されることになるだろう。しかし、それで「万事解決」なのだろうか? 答えはNOだ。現状制度を維持・温存させることで国民は将来大きなツケを払わされることになるだろう。外国人労働者に依存することで、日本社会の本当の課題から目を背けてはいけない。
外国人労働者がいないと日本(社会)は成り立たない――。コロナ禍で囁かれたこの言説の真偽について、Wedge7月号の特集『日本を目指す外国人労働者 これ以上便利使いするな』で検証していきたい。
〝人手不足〟に喘ぐ日本で、頻繁に取り上げられるフレーズがある。「外国人労働者がいなければ日本(社会)は成り立たない」というものだ。しかし、外国人労働者に依存し続けることで、日本の本当の課題から目を背けていないか?ご都合主義の外国人労働者受け入れに終止符を打たなければ、将来に大きな禍根を残すことになる。