2024年12月22日(日)

2024年米大統領選挙への道

2024年4月17日

16日、マンハッタンのコンビニエンスストアを訪問したトランプ前大統領(REUTERS/AFLO)

 4月の第2週、ジョー・バイデン米大統領は、岸田文雄首相を国賓として招き、両首脳会談の結果、防衛および経済安全保障から宇宙分野まで、幅広い分野で日米が協力することを発表した。それには、米英豪3カ国の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」と日本との技術協力も含まれている。また、同大統領は、ホワイトハウスで初となる日米比3カ国による首脳会談も開催した。

 これらの一連のバイデン大統領の行動は、中国を意識したものであることは言うまでもないが、多国籍の枠組みにおいてリーダーシップを発揮することで、秋の米大統領選挙で戦う公算が大きくなったドナルド・トランプ前大統領との比較を鮮明にする狙いもあった。トランプ前大統領は1対1のディール(取引)を好むからだ。

 ただ、今回の日米首脳会談および日米比首脳会談が、バイデン大統領の支持率を高めるのかは不透明だ。後者は、対中国を念頭に置いたものだが、米国の有権者は、自身の問題として捉えていない。同大統領の支持率上昇と直結する大きな要因の1つは、イスラエル・ガザ戦争における成果――特に即時停戦ないし恒久的停戦を実現できるか否かである。

 逆にトランプ前大統領の立場からすれば、11月5日の投開票日までに、イスラエルとイスラム組織ハマスに恒久的停戦に応じさせないことが、選挙戦を有利に戦う条件になる。では、トランプ前大統領は今後、どのようにイスラエル・ガザ戦争を利用していくのだろうか。

 本論に入る前に、駐日イスラエル大使館のギラッド・コーヘン特命全権大使と駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム大使にヒアリングを実施したので、米大統領選挙に関する両氏の声を紹介しよう。

2人の駐日大使は米大統領選挙をどうみているのか?

 2024年1月15日、ゼミ生を引率して麹町にある駐日イスラエル大使館を訪問し、コーヘン大使に、イスラエル・ガザ戦争におけるコンフリクト(対立)を緩和するコミュニケーションについてヒアリング調査を実施した。

 その際、コーヘン大使に「もしトランプ前大統領が秋の大統領選挙で勝利して、大統領に返り咲いたら、イスラエルとハマスの衝突にどのような影響を与えますか」と質問をした。同大使は「分かりません」と率直に返答した上で、バイデン大統領はイスラエル支持者であると述べた。

 一方、トランプ前大統領に関しては、イスラエルの「友人」と表現し、在イスラエル米国大使館のエルサレムへの移転を高く評価した。

 さらに、コーヘン大使はイスラエルと米国は同盟国であり、両国は民主主義を柱としていると前置きして、秋の米大統領選挙で、バイデン大統領とトランプ前大統領のどちらの候補者が勝利しても、イスラエルは対応できるという自信を示して見せた。

 1カ月ほど経た2月19日、広尾にある駐日パレスチナ常駐総代表部でシアム大使にゼミ生と共にヒアリング調査を行ったが、今回の米大統領選挙に関して同大使は、コーヘン大使とは全く異なった見方をしていた。

 シアム大使に「バイデンとトランプのどちらの候補がパレスチナにとって望ましいですか」と尋ねると、「誰が米国の大統領になっても、イスラエルの占領政策に変わりはありません」という答えが返ってきた。同大使は約1時間20分のヒアリング調査の間に、「bully(いじめる)」という言葉を繰り返し使用した。パレスチナはイスラエル建国以来、75年間もいじめられ続けてきたと言うのだ。

 また、シアム大使は、バイデン大統領の「私はユダヤ主義者だ。ユダヤ人でなくてもシオニストになれる」(23年12月5日)という発言を問題視し、「彼は盲目的にイスラエル支持に走っている」と批判した。同時にトランプ前大統領にも期待が持てず、次の米大統領でどのような結果が生じても、パレスチナが置かれた状況が劇的に改善される可能性は極めて低いという悲観的な見方を示した。


新着記事

»もっと見る