2024年12月22日(日)

2024年米大統領選挙への道

2024年1月31日

「どの有罪評決がトランプに不利になるか?」

1月27日ネバダ州で行われたトランプ集会に参加した支持者たち(AP/AFLO)

 中西部アイオワ州での共和党党員集会と、東部ニューハンプシャー州の予備選挙の双方で圧勝したドナルド・トランプ前大統領は、第3戦となる西部ネバダ州、そして第4戦の南部サウスカロライナ州においても勝利する勢いである。ライバルのニッキー・ヘイリー元国連大使は、共和党予備選挙におけるトランプ前大統領の怒涛の進撃を止めることができないかもしれない。

 しかし、仮にトランプ前大統領が共和党大統領候補になったとしても、本選では裁判における有罪評決がゲームチェンジャーになる可能性がある。では、どの裁判における有罪評決が、トランプ前大統領に最もダメージを与えることになるのか。

 また、民主党大統領候補の指名獲得がすでに確実視されているジョー・バイデン大統領と、共和党大統領候補の指名獲得を目指すトランプ前大統領は、双方の「弱み」をどこに見ているのか。

有罪評決の影響力

 トランプ前大統領は、4件で刑事訴追され、91の罪に問われている。第1は、2020年米大統領選挙の結果認定を妨害した米議会議事堂襲撃事件で、初公判は3月4日であったが延期された。

 第2は、元ポルノ女優への口止め料を弁護士費用として計上した罪で、初公判は3月25日に始まる。

 第3は、国家安全保障に関わる機密文書を含んだ相当数の文書を持ち出し、私邸においてずさんな管理下に置いていた事件で、初公判は5月20日に設定されている。米大統領は大統領退任時に、大統領職にあったあらゆる文書を、米国立公文書館に提出することになっている。

 第4は、南部ジョージア州で20年大統領選挙の結果を共謀して覆そうとした事件で、初公判は未定である。

 ジョージア州における裁判は、評決が出るまでに少なくとも4カ月を要すると見られているので、投開票日の11月5日をまたぐことになる。つまり、投開票日前に有罪評決が出る可能性は低い。

 大方の見方は、投開票日前に有罪評決が出れば、選挙戦を戦うトランプ前大統領に不利に働くと言われているが、どの裁判における有罪評決が、彼に最もダメージを与えるのだろうか。

 米ハーバード大学と調査会社ハリスの全国を対象にした共同世論調査(24年1月17~18日実施)では、「米議会議事堂襲撃事件で有罪評決が出た場合、どちらの候補に投票するか」という質問に対して、52%がバイデン大統領、48%がトランプ前大統領と回答した。トランプ前大統領が、バイデン大統領を4ポイント下回った(図表)。


 ところが同調査では、機密文書持ち出しの事件で、有罪評決を受けた場合、トランプ前大統領の支持率は53%、バイデン大統領は47%で、同前大統領が6ポイント上回る。また、ジョージア州における裁判で有罪評決が下されても、トランプ前大統領の支持率は51%、バイデン大統領は49%で、同前大統領が2ポイントリードした。

 4件の刑事訴追のうち3件を対象にした同調査では、米議会議事堂襲撃事件の有罪評決のみが、トランプ前大統領にマイナスの影響を与えるという結果が出た。

 バイデン大統領と同陣営は、この世論調査結果に注目するのは当然だ。トランプ支持者による米議会議事堂襲撃事件は、民主主義に対する脅威である。バイデン大統領は、24年米大統領選挙のメインテーマを、民主主義の擁護に置き、「トランプとMAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大に)共和党は、民主主義を破壊する」というメッセージを、今後も繰り返し発信していくものと考えられる。

 また、バイデン大統領は、今回の大統領選挙は民主主義に投票するか否かの「選択肢」であるという認識を有権者の間に広めようと、「投票用紙に民主主義と書いてある」というメッセージも送り続けるだろう。

 さらに、バイデン大統領と同陣営は、米議会議事堂襲撃事件に関して「スピード裁判」が行われ、投開票日前に有罪評決が下されて、それがトランプ前大統領との戦いにおいて、ゲームチェンジャーになることを望んでいるのではないだろうか。


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