無党派層をとれないトランプ
東部ニューハンプシャー州で1月23日に実施された共和党予備選挙では、トランプ前大統領はヘイリー元国連大使に約10ポイント差をつけて勝利したが、「弱み」も見せた。米CBSニュースの「出口調査(exit poll)」によれば、同州の無党派層の58%がヘイリー元国連大使、39%がトランプ前大統領に投票し、同前大統領が約20ポイントも下回った。
バイデン大統領は、この調査結果を重視して、激戦州の中でも、特に東部ペンシルベニア、中西部ミシガンおよびウィスコンシンの3州における無党派層獲得に選挙資金、時間およびエネルギーを費やすことが予想される。
無党派層の獲得に限ったことではないが、バイデン大統領を支持し
政策におけるバイデンの「弱み」
これに対して、トランプ大統領は移民政策がバイデン大統領の「弱み」と見ていることは確かだ。英誌エコノミストと調査会社ユーガブの共同世論調査(24年1月21~23日実施)では、バイデン大統領の移民政策に対して、31%が支持、60%が不支持と答え、不支持が支持を約30ポイントも上回った。
米CBSニュースの「入口調査(entrance poll)」によると、中西部アイオワ州で1月15日に行われた共和党党員集会に参加した有権者の38%が「経済」、34%が「移民政策」を最も重要な争点に挙げた。メキシコと国境を接しないアイオワ州で、彼らは移民政策に対して経済に次いで2番目に高い関心を示しているのだ。
同様に、東部ニューハンプシャー州における米CBSニュースの出口調査では、34%が「経済」、31%が「移民政策」と回答し、メキシコと国境を隣接していないニューハンプシャー州でも、移民政策は重要度で2位を占めた。
「移民政策は最も重要な問題である」と回答した有権者の79%がトランプ前大統領、20%がヘイリー元国連大使に投票をし、トランプ前大統領が、ヘイリー元国連大使を約60ポイントも引き離した。ニューハンプシャー州の有権者は、移民政策ではトランプ前大統領に絶対の信頼を置いている。
全国の共和党支持者を対象にした世論調査においても、移民問題に対する懸念は極めて高い。米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の世論調査(24年1月10日発表)では、メキシコとの国境における不法移民の問題について、93%の共和党支持者が「非常に深刻」と答えた。
また、エコノミストとユーガブの共同世論調査では、全体で32%が移民は米国を「良い状態にしている」、18%が「変わらない」、39%が「悪い状態にしている」、10%が「分からない」と答えた。2020年米大統領選挙でトランプ前大統領に投票した有権者は、70%が「悪い状態にしている」と捉えている。
さらに、同調査では移民政策に対するバイデン大統領の支持率は、31%が支持、60%が不支持で、支持が不支持を約30ポイントも下回った。バイデン大統領はウクライナ、イスラエル、台湾に対する支援の議会予算を通すために、議会共和党が強く求める国境管理強化の予算を抱き合わせた緊急支援パッケージを作った。バイデン大統領は、そのようにして共和党に妥協して承認を得ようと、昨年10月から働きかけている。
一方、トランプ前大統領は承認を阻止すべく、共和党に圧力をかけている。なぜならば、トランプ前大統領は国境管理が改善された場合、バイデン大統領のクレジットになると考えているからである。ウクライナとロシアの戦争、イスラエルとハマスの軍事衝突、中国と台湾の対立およびメキシコとの国境管理は、すでに大統領選挙を有利に戦うための「道具」になっている。