今回のテーマは、「本選をにらむトランプ――激戦州の選挙人をどう獲得するのか?」である。共和党大統領候補指名争いの支持率において、他の候補を大きく引き離しているドナルド・トランプ前大統領は、1回目に続き2回目のテレビ討論会も欠席した。しかし、「トランプ氏優勢」は変わらない。
共和党の主要候補はトランプ前大統領に対して、どのような対策をとっているのか。また、トランプ氏「1強」は、なぜ変わらないのか。そして、同氏が中西部ミシガン州の労働者を対象に演説を行った本当の理由は何か。
共和党候補の「トランプ対策」
これまでの選挙運動および2回の共和党大統領候補テレビ討論会を分析すると、起業家のビベク・ラマスワミ氏とロン・デサンティス南部フロリダ州知事のトランプ対策が対照的であることが分かる。ラマスワミ氏は、トランプ前大統領に対して「同化」、デサンティス氏は「差別化」の選挙戦略を選択した。
共和党大統領候補の中で、トランプ前大統領を擁護する度合、即ち「トランプ度」が最も高いラマスワミ氏は、2回目のテレビ討論会においても、「トランプ大統領は素晴らしい大統領であった。彼が残したものに敬意を払う」と強調した。
加えて、「米国第一主義は、トランプ前大統領1人のアジェンダではなく、若い世代が次のレベルに高めていくものである」と主張した。もちろん、「若い世代」とは38歳のラマスワミ氏本人であり、若者票を狙った発言であることは確かだ。
ラマスワミ氏はトランプ前大統領に敬意を示し、政策において同じ立場をとり、米国第一主義を発展させていく「継承者」を演出した。
一方、フロリダ州で妊娠6週間後の人工妊娠中絶を禁止するという過激な法案を成立させたデサンティス知事は、トランプ前大統領ではなく、自分こそが「本物の保守派」であるというメッセージを発信して、トランプ氏との差別化を図っている。
これに対してトランプ前大統領は、デサンティス知事の人工妊娠中絶に関する政策を「とんでもないミスだ」と批判するが、妊娠してから何週間後に人工妊娠中絶を禁止するのかは明言していない。断言すれば、本選で無党派層の票を失うからだ。
2回目のテレビ討論会で、デサンティス知事はトランプ前大統領が討論会に参加して、反対理由を説明するように強く求めた。
しかし、ラマスワミ氏とデサンティス氏の「トランプ対策」は、トランプ前大統領を支持率で首位の座から引きずり下ろすまでの効果を上げていない。率直に言ってしまえば、打つ手がないのだ。