今回のテーマは、「トランプ3件目の起訴と2024年米大統領選挙への影響」である。首都ワシントンの連邦大陪審は8月1日(現地時間)、20年米大統領選挙の結果を覆そうとしたドナルド・トランプ前大統領を、「国家を欺こうと共謀した罪」など、4つの罪状で起訴した。
今年3月の元ポルノ女優に対する口止め料をめぐる事業記録改ざんおよび、6月の国家安全保障問題に関わる機密情報持ち出しに続いて、3件目の起訴である。トランプ前大統領は、どのようにして選挙結果を覆そうとしたのか。次の一手は何か。そして、世論の動向は――。
故意による「ウソの拡散」
45ページに及ぶ起訴状によれば、トランプ前大統領は20年米大統領選挙においてジョー・バイデン大統領に敗北した事実を認識していたのにもかかわらず、権力の座に留まろうと決意し、選挙結果はインチキであると主張して、自分が勝利をしたとウソを拡散した。同前大統領は、虚偽の主張を合法であるかのようにみせかけて、故意にウソを流布した。
その結果、米国内に不信と怒りの雰囲気を作り、国民の選挙に対する信頼性を損ねた。
トランプ前大統領が激戦州ジョージアで、1万人以上の死者が投票を行ったとほのめかしたことなど、起訴状には言動が詳細に明記されている。また、同前大統領に協力した6人の「共謀者」の存在も指摘されているが、彼らの氏名は公表していない。
虚偽の「選挙人名簿」
米国では、登録した有権者が州ごとの各党の選挙人を選出する。選挙人は各州の人口によって割り当てられる。例えば、南部バージニア州は選挙人「13」である。
20年米大統領選挙で、バイデン候補(当時)は、米史上最高の8100万票以上を獲得した。彼らはバイデン候補を支持する選挙人に投票をしたことになる。
起訴状によると、トランプ前大統領と共謀者は、激戦7州(西部アリゾナ、南部ジョージア、中西部ミシガン、西部ネバダ、西部ニューメキシコ、東部ペンシルベニア、中西部ウイスコンシン)を標的にして、虚偽の「選挙人名簿」を作成した。そして、米連邦議会議事堂で21年1月6日に選挙結果確定の手続をする際、司会進行役を務めるマイク・ペンス副大統領(当時)に、合法的に選ばれた選挙人を拒絶し、虚偽の選挙人名簿を使用して手続を行うように、説得を試みた。
トランプ前大統領と共謀者は、20年米大統領選挙の結果を覆すために、ペンス氏に圧力をかけて、選挙結果の確定手続を妨害しようとしたのである。しかし、トランプ前大統領と共謀者の「ペンス・カード」を用いた作戦は、失敗に終わった。