2024年12月22日(日)

2024年米大統領選挙への道

2023年6月20日

 今回のテーマは、「トランプは有罪になるのか、それとも無罪になるのか? ーー2024年米大統領選挙への影響」である。ドナルド・トランプ前大統領は、意図的な国家安全保障の情報保持、司法妨害、文書と記録の隠蔽や工作などを含めた37の罪で、連邦大陪審に起訴された。

 ポルノ女優への口止め料を弁護士料として改ざんした罪で今年3月、ニューヨーク州マンハッタン地区の検事に起訴されたのに続き、2回目の起訴となった。ただし、今回の起訴は連邦レベルであり、有罪になった場合、罪が重い。

 トランプ前大統領は有罪になるのか、それとも無罪になるのか。評決の24年米大統領選挙への影響はーー。

6月13日、フロリダ州マイアミの連邦地裁に出廷した後、ニュージャージー州のTrump National Golf Clubに場所を移し、集会を行なったトランプ前大統領(REUTERS/AFLO)

トランプに有利に働く2回の起訴

 まず、2回目の起訴後の世論調査をみてみよう。2回にわたるトランプ起訴にもかかわらず、共和党支持者はトランプ支持で固まりつつあるようだ。

 米公共ラジオ(NPR)、公共放送(PBS)、マリスト大学(東部ニューヨーク州)の共同世論調査(23年6月12~14日実施)によれば、トランプ前大統領に対する捜査に関して、米国民の50%が、同前大統領が「違法なことをした」、23%が「道徳的に間違ったことをしたが、違法なことはしていない」、25%が「違法なことは何もしていない」と回答した。しかし、共和党支持者の50%がトランプ氏は「違法なことは何もしていない」と答えた。

 また、「トランプ大統領は大統領選挙から撤退すべきか、それとも継続すべきか」という質問に対して、全体で56%が「撤退すべき」、43%が「継続すべき」と回答し、「撤退」が「継続」を13ポイント上回った。ただし、共和党支持者の83%は「継続すべき」と考えている。

 さらに、「もしドナルド・トランプが選挙を継続するならば、彼を支持しますか」という質問に関して、共和党支持者の68%が「ドナルド・トランプを支持する」、29%が「他の共和党候補を支持する」と回答した。現時点で共和党内では主要候補が13人に達したが、これではトランプ氏に対して勝ち目はない。

 同調査によれば、2回目の起訴後、共和党支持者と同党に傾いている無党派層の間で、トランプ前大統領の好感度が上昇した。彼らの76%がトランプ氏に対して「好感が持てる」と回答した。23年2月の同調査では、トランプ氏の好感度は68%であったので、8ポイントアップしたことになる。

 共和党内では、2回の起訴はトランプ前大統領に有利に働いていると言える。

バイデン陣営の本音

 雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(23年6月10~13日実施)の結果も紹介しよう。同調査では、米国民の38%が2回目の意図的な国家安全保障の情報保持による起訴を「強く支持する」、14%が「やや支持する」と回答し、「支持」の合計は52%であった。一方、26%が「強く支持しない」、10%が「やや支持しない」と答え、「不支持」の合計は36%になり、「支持」が「不支持」を16ポイント上回った。

 ただし党派別にみると、民主党支持者は「支持」の合計が85%、無党派層は53%であったのに対して、共和党支持者はわずか17%であった。20年米大統領選挙においてトランプ前大統領に投票した有権者の中で起訴を「支持する」と回答した者は13%で、さらに4ポイント低かった。

 次に、米クイニピアック大学(東部コネチカット州)が6月14日に発表した世論調査結果を見ると、2回目の起訴後、共和党内の支持率においてトランプ前大統領がライバルのロン・デサンティスフロリダ州知事を30ポイントも引き離した。今年2月16日の時点では、トランプ氏がデサンティス氏を6ポイントリードしていた。同調査でも今回の起訴が、確実にトランプ氏の追い風になっていることが分かる。

 さて、どの世論調査を見て語ったのかは不明だが、米メディアは、2回目の起訴後に実施された調査結果を知ったファーストレディのジル・バイデン夫人が、ニューヨーク市のアッパー・イースト・サイドにあるマンションに集まった民主党支持者に、「彼ら(共和党支持者)は起訴を気にかけていません。少しショックです」と本心を明かしたと報じた。

 バイデン陣営は、2回目の起訴で共和党支持者がトランプ支持を再考し始めることを期待していたのかもしれない。ジル夫人のこの発言はバイデン陣営の本音だろう。


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