今回のテーマは、「オバマ再選戦略を手本にするバイデン」である。24年米大統領選挙への出馬表明をしたジョー・バイデン大統領は、強力なライバル候補が出馬しなければ、ほぼ無風状態で民主党大統領候補になる可能性が高いと見られている。
なぜ、バイデン大統領はこのタイミングで出馬表明を行ったのか。バラク・オバマ元大統領の再選を目指した選挙戦略とバイデン氏の戦略は、どのように類似しているのか。そして、バイデン氏は誰を選対本部長と副本部長にしたのか。その狙いは何かーー。
オバマと「同じメッセージ」
バイデン大統領とオバマ元大統領の再選戦略には共通項がある(図表)。
バイデン大統領は4月25日、24年米大統領選の再選を目指して出馬表明をした。20年大統領選挙への出馬表明も、19年4月25日であった。ちょうど4年目の記念すべき日である。オバマ元大統領が12年大統領選挙への出馬を表明したのも、前年の4月であった。
加えて、バイデン大統領はオバマ元大統領と同様、支持者を集めた集会ではなく、ビデオメッセージでの出馬表明を選択した。高齢なバイデン氏は、不確実性が高いライブの演説を避けて、コントロールが効くビデオを自身のツイッターにアップしたとの指摘がある。
確かにそのような見方もできるのだが、筆者はバイデン大統領が意図的に標的となる有権者を出演させて、ビデオのメリットを最大限に活かしたことに注目した。この点も、オバマ元大統領が再選を狙った出馬表明のビデオと極めて類似していると言える。
バイデン大統領は今回のビデオに、黒人、労働者、LGBTQ(性的少数者)および若者を多く登場させた。彼らはバイデン氏の多様な支持者を集めた「異文化連合軍」の重要なメンバーである。
一方、オバマ元大統領は西部ネバダ州、コロラド州並びに中西部ミシガン州といった激戦州に住む白人、ヒスパニック系(中南米系)や黒人女性および、若者をビデオに使った。オバマ氏は、彼らから構成された異文化連合軍の票で再選を果たすことができた。
バイデン大統領もオバマ元大統領と同様、異文化連合軍の票を組み合わせて、共和党大統領候補に勝利する意図が、出馬表明のビデオにはっきり見える。
さらにバイデン大統領は、オバマ元大統領が再選の選挙で発したメッセージを、ビデオの中で「核となるメッセージ」として利用した。それは、「一緒に(やり残した)仕事を(次の4年間で)成し遂げよう」というメッセージである。
バイデン大統領は、オバマ元大統領と同じメッセージを繰り返し発信して、有権者に訴えた。出馬表明をした4月25日、同大統領は首都ワシントンで労働組合のメンバーを対象に演説を行い、ここでも上のメッセージを送って支持を求めた。