今回のテーマは「デサンティス知事の選挙戦略とロシア」である。ドナルド・トランプ前米大統領の強力なライバルになると見られているロン・デサンティス南部フロリダ州知事(共和党)は、まだ24年米大統領選挙への出馬宣言を行っていない。
しかし、中西部アイオワ州や西部ネバダ州などを訪問し、積極的に選挙運動を展開している。デサンティス知事はどのような選挙戦略で、共和党予備選挙を戦おうとしているのか。また、ロシアにとって都合の良い米大統領候補は誰か―ー。
「反アフリカ系」「反LGBTQ」「反批判的人種理論」のデサンティス
デサンティス知事は、フロリダ州の公立学校でアフリカ系米国人の歴史および社会貢献を学習する上級科目を禁止した。また、幼児と小学校低学年の児童を対象にしたLGBTQ(性的少数派)教育を禁止する「ゲイと言わないで法案」に署名した。同法案はLGBTQ教育を制限するものであり、フロリダ州では昨年7月1日から施行された。
性教育に関してデサンティス知事は、「教師ではなく親が教えるべきである」と唱え、幼稚園と小学校低学年における性的指向とジェンダー・アイデンティティ(性自認)に関する議論を禁止した。米FOXニュースと公共放送によれば、同知事は「ゲイと言わないで法案」の適用範囲を高校生まで拡大しようとしている。
これに対して、反対派は同法案がLGBTQに汚名を着せて、性的少数派の子供を孤立させると反論した。彼らは、反LGBTQ法案がLGBTQのアイデンティティと歴史並びに文化を消滅させる危険性を含んでいると捉えている。
さらに、デサンティス知事は異なった価値観、信念と物の味方を受容する「多様性トレーニング」および、白人至上主義の遺産が法律や制度に組み込まれていると主張する「批判的人種理論(Critical Race Theory)」を否定した。その上で、学校や民間企業において「差別は社会的構造の問題である」とする批判的人種理論を教育することに反対した。
同知事はフロリダ州における「反アフリカ系」「反LGBTQ」と「反批判的人種理論」の政策を成功事例として挙げて、他州においても展開しようと訴えている。
デサンティスの狙いはどこにあるのか?
では、なぜデサンティス知事は「反アフリカ系」、「反LGBTQ」および「反批判的人種理論」を強調するのか。
率直に言ってしまえば、
共和党は来年、アイオワ州で党員集会を開催し、続いて東部ニューハンプシャー州で最初の予備選挙を行う予定である。アイオワ州における白人の人口の割合は約90%、ニューハンプシャー州は約93%である。両州は、黒人の人口の割合が約26%を占める南部サウスカロライナ州と比べて、人種と民族において多様性に欠ける。
同知事は、保守的な白人が多い州では「反アフリカ系」とリベラル色が強い「反LGBTQ」並びに「反批判的人種理論」が、票獲得の上で効果的であると見ているのだ。