2023年2月6日(月)

2024年米大統領選挙への道

2023年1月21日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「バイデンの機密文書持ち出し問題の行方」である。米国では機密文書持ち出しが原因で、現職のジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領が、特別検察官の捜査対象になるという異例の事態が起きた。

 米メディアは、トランプ前大統領の機密文書持ち出し問題について、「まったく無責任だ」と非難したバイデン大統領に焦点を当てている。バイデン氏は、果たしてこの危機を乗り切ることができるのだろうか――。

記者の質問に答えるバイデン大統領(AP/AFLO)

バイデンとトランプの機密文書持ち出しはどう違うのか?

 バイデン大統領とトランプ前大統領の「機密文書持ち出し問題」には明確な相違点がある(図表)。まず、発見された機密文書の数は、バイデン氏が約26点、トランプ氏が300点以上である(日本時間1月16日時点)。

 次に、バイデン氏は国立公文書記録管理局(NARA)および米司法省の捜査に対して、極めて協力的である。機密文書を迅速に、しかも自主的に返却している。

 一方、トランプ氏は、抵抗を続け、一年以上も南部フロリダ州の私邸マーラ・ア・ラーゴに機密文書を保管した。連邦大陪審が昨年5月11日、全ての機密文書の返却を求めて召喚状を出したが、トランプ側はすでに返却したと主張した。

そこで、米連邦捜査局(FBI)が8月8日に家宅捜索し、100点以上の機密文書を押収した。捜査に抵抗して、機密文書を隠し、破棄したと見られているトランプ大統領の捜査妨害の可能性は、バイデン大統領よりも大きいだろう。

「意図的」VS.「非意図的」

 バイデン大統領は、特別法律顧問のリチャード・サウバー弁護士を通じて、「うっかり機密文書の置き場所を誤った」という声明を出した。この声明には、「バイデン大統領は不注意に機密文書を持ち出したのであって、決して意図的ではない。機密文書を隠して破棄した疑いのあるトランプ前大統領とは全く違う」というメッセージが込められている。

 一言で言えば、「うっかりミス」であったと言いたいのだ。刑事責任を問われる上で、「意図的」ないし「非意図的」が、極めて重要なポイントになるからだ。

 バイデン大統領を支持するデビー・スタバノウ上院議員(民主党・中西部ミシガン州)は、米NBCニュースとのインタビューで、バイデン大統領とトランプ前大統領の機密文書持ち出しが「意図的」か否かに関して、自動車事故に喩えて説明した。

 2件の自動車事故のうち、1件は偶然発生した事故であり、もう1件は意図的に事故を起こしたものであると、スタバノウ議員は議論した。バイデン大統領の機密文書持ち出しは「非意図的」であり、トランプ大統領は「意図的」であるというメッセージを、米国民に対して容易な比喩を用いて発信した。


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