2023年1月30日(月)

2024年米大統領選挙への道

2023年1月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

熱烈な支持者はまだいるが……(REUTERS/AFLO)

 今回のテーマは「2023年『トランプ離れ』は加速するのか?」である。24年米大統領選挙への出馬表明をしたドナルド・トランプ前大統領の好感度に変化が見える。

 米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の有権者登録を行った共和党支持者を対象にした世論調査(22年12月8~12日実施)では、トランプ前大統領に対して70%が「好感が持てる」、20%が「好感が持てない」と回答した。共和党支持者の間で好感が7割あるとはいえ、16年3月以来、最も低い数字であった点は看過できない。

 加えて、22年11月の米中間選挙における激戦6州(東部ペンシルべニア州、中西部オハイオ州、南部ノースカロライナ州、ジョージア州、西部アリゾナ州、ネバダ州)でトランプ氏が推薦した上院議員候補の勝敗(2勝4敗)から、すでに「トランプ離れ」の兆しが窺える。2023年は、果たして「トランプ離れ」が一気に加速する年になるのか――。

トランプが納税記録を隠し続けた理由

 米国では大統領候補は納税記録を公開する慣例があるが、トランプ前大統領は選挙期間中、「監査中だ」と繰り返し述べて、公開を拒み続けた。トランプ氏が17年、大統領に就任すると、ホワイトハウスのケリーアン・コンウエイ大統領顧問(当時)は、「米国民はもはや(トランプ氏の)納税記録に関心がない」と語り、納税を争点から消そうと試みた。しかし、その後もトランプ氏の納税を巡る疑惑は消えなかった。

 なぜ、トランプ前大統領は納税記録の公開を拒否し続けたのか。下院歳入委員会が12月30日に公開した2015~20年の納税記録から、16年と17年のトランプ氏の納税額がわずか750ドル(約10万円)であったことが分かった。米メディアは、この納税額は学校の教師が収める額よりも低いと指摘した。同氏は、20年の連邦所得税を支払っていなかったことも明らかになった。

 2016年米大統領選挙でトランプ前大統領は、「フェア(公平)」及び「アンフェア(不公平)」を連呼し、白人労働者や中間層の代弁者として自身を描いて、エスタブリッシュメント(既成の特権階層)を激しく批判した。同前大統領は独自の「フェア・アンフェア」の価値基準を用いて、相手を容赦なく攻撃してきた。しかし、納税額が明白になったので、米国民からトランプ氏こそが不公平であると非難されても当然である。

逆効果のメッセージ?

 米ニューヨーク州地裁は12月6日、トランプ一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」に対して、脱税などで有罪評決を下した。トランプ前大統領個人は起訴されなかったが、雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(同年12月10~13日実施)では、米国民の41%が「有罪評決はトランプ氏個人の犯罪の関与を示唆している」と回答した。一方、「示唆していない」は33%で、8ポイント少なかった。

 トランプ前大統領の側近ジェイソン・ミラー氏は12月3日、日本テレビとのインタビューで、24年米大統領選挙について16年大統領選挙の戦略に回帰し、「反体制のメッセージを発信して、既得権益の打破を目指す」と語った。  

 トランプ前大統領の納税額が明確になったのにも拘わらず、「既得権益を打破しよう」と呼び掛けても、説得力に欠ける。このメッセージは、却って納税に対して敏感に反応する米国民に「トランプ離れ」を加速させ、結局、逆効果になるのではないだろうか。


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