今回のテーマは「トランプとデサンティス」である。ドナルド・トランプ前大統領は11月15日、早々と24年米大統領選挙への立候補を表明した。共和党内のライバルと目される南部フロリダ州のロン・デサンティス知事は、まだ出馬表明をしていないが、トランプ氏は同知事を強く意識した行動に出ている。
トランプ前大統領はどのようなデサンティス対策を講じているのか。仮にデサンティス知事が次期大統領選挙に立候補した場合、一体何が争点になるのか――。
トランプを好きか嫌いか
トランプ前大統領は果たして優れた大統領であったのか。トランプ出馬表明後に行った雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(22年11月19~22日実施)によれば、「ドナルド・トランプ氏は大統領としてどのように歴史に残ると思いますか」という質問に対して、「極めて優れていた」と「平均以上」を合わせると33%であった。一方、「劣っていた」と「平均以下」の合計は42%であった。
ところが、共和党支持者の「極めて優れていた」と「平均以上」の合計は66%に上った。21年1月6日に発生した米連邦議会議事堂襲撃事件及びホワイトハウスの機密情報を不適切に扱った問題にも拘らず、共和党支持者はトランプ氏が「極めて優れていた」大統領ないし「平均以上」の大統領として歴史に残ると考えている。
さらに、同調査では「ドナルド・トランプ氏の意見に賛成するか否かに拘らず、人として彼を好きですか嫌いですか」という質問に関して、31%が「好き」、46%が「嫌い」と回答し、「嫌い」が「好き」を15ポイント上回った。しかし、共和党支持者に限ると、60%が「好き」、22%が「嫌い」と答え、「好き」が「嫌い」を38ポイントもリードした。
ということは、仮に米連邦議会議事堂襲撃事件並びに機密情報の持ち出しを捜査するジャック・スミス特別検察官が、選挙期間中にトランプ前大統領を起訴した場合、同前大統領は「バイデン(大統領)の権力乱用である」とこれまで以上に非難して、自身に好感を抱いている6割の共和党支持者の結束を図るだろう。
トランプのデサンティス対策
トランプ前大統領は、自分に忠誠心を示すMAGA(Make America Great Again:米国を再び強く)とデサンティス知事を切り離す作戦に出た。
エコノミストとユーゴヴの共同世論調査を見ると、共和党内におけるデサンティス知事の人気は高い。共和党支持者の70%及び、20年米大統領選挙でトランプ前大統領に投票をした支持者の83%が、同知事に対して好感を抱いている。MAGAの約8割が、デサンティス知事に好意的なのだ。これはトランプ氏にとって、実に不都合なことである。
そこで、トランプ前大統領は「彼等(デサンティス氏を支持するグループ)は我々(MAGA)を倒そうとしている」と主張して、デサンティス知事を反MAGAとして描き、MAGAから同知事を切り離そうとしている。
さらに、米紙ワシントン・ポストによれば、トランプ選対を率いるトップアドバイザーにフロリダ州在住の政治コンサルタントスージー・ワイルズ氏の名前が挙がっている。ワイルズ氏は16年と20年の米大統領選挙でトランプ氏の同州における2回の勝利に貢献した人物である。
しかも、18年のフロリダ州知事選でデサンティス氏の選挙運動を担当しており、同氏の選挙戦略に精通していると見られている。トランプ氏はすでに出馬表明をしていないデサンティス氏対策を講じている。