2024年12月23日(月)

2024年米大統領選挙への道

2022年11月24日

 今回のテーマは「トランプの刑事捜査監督『特別検察官』任命の意図と展開」である。2020年米中間選挙上院選においてドナルド・トランプ前大統領は東部ペンシルバニア州、西部アリゾナ州およびネバダ州の重点州に候補を立てたが、全て敗れ、与党民主党から多数派を奪還できなかった。

 にもかかわらず、トランプ氏が2024年大統領選挙に出馬すると強行に表明すると、それに対抗するかのように、メリック・ガーランド米司法長官は特別検察官の任命を発表した。なぜ、ガーランド司法長官はこのタイミングを狙ったのか。また、何が24年米大統領選挙における最重要ファクターになり得るのか――。

18日、フロリダ州のマー・ア・ラゴ で演説をしたトランプ前大統領(AP/AFLO)

なぜ3日後なのか?

 トランプ前大統領は11月15日、南部フロリダ州の私邸マーラ・ア・ラーゴで早々と24年米大統領選挙への出馬表明を行った。大統領選挙は同年11月5日なので、通常であれば、23年春に立候補を行う。トランプ氏の出馬表明はかなり早いと言える。

 その背景には、トランプ前大統領がホワイトハウスからマーラ・ア・ラーゴに持ち出した機密文書がある。トランプ氏は米司法省に起訴される前に先手を打ったのだ。

 ところが、ガーランド長官はトランプ前大統領の出馬表明から3日後の18日、刑事捜査を監督する特別検察官を任命すると発表した。任命されたのは、1990年代のコソボ紛争での戦争犯罪を裁くオランダ・ハーグ特別法廷の首席検察官ジャック・スミス氏である。

 スミス氏は「公平な検察官」という評価を得ており、無党派に有権者登録をしている。ガーランド長官は、特別検察官任命が「政治的動機」に基づくものであるという批判をかわすために、同氏を選択したと言える。

 トランプ前大統領は出馬表明を行って司法省に圧力をかければ、同省は自分に対する刑事捜査に慎重になるだとうと読んだ。しかし、その読みは見事に外れたのである。

 トランプ出馬表明から3日後、ガーランド長官はトランプ氏の意表を突いてスミス特別検察官任命を発表した。あるいは、満を持して特別検察官任命のカードを切ったと言える。そうすることで、ガーランド長官はトランプ氏の刑事捜査に関して、「配慮しない」という明確なメッセージを送ったのである。

 トランプ前大統領の早期の大統領選挙出馬表明は、自身に対する刑事捜査を加速させる結果になった。つまり、逆効果になってしまったのである。

バイデンの立ち位置

 トランプ前大統領はジョー・バイデン大統領が司法省を「政治の道具」に利用して、「魔女狩り」を行っていると批判し、「不公平」であると議論した。その狙いは、トランプ氏を応援するMAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大に)の支持者の結束を図ることである。トランプ氏はMAGAに向かって、バイデン氏が24年大統領選挙から自分を引きずり降ろすためだと訴えた上で、「バイデンは私に勝てないからだ」というメッセージを発信した。

 これに対して、バイデン大統領は20年米大統領選挙のときから、司法省は完全な独立機関であり、同省の意思決定に関与及び介入しないと約束してきた。ホワイトハウスのカリーン・ジャンピエール報道官は18日の定例記者会見で、バイデン大統領は特別検察官任命に関して、「ホワイトハウスは関与をしていないし、司法長官から事前に報告も受けていない」と記者団に説明した。

 バイデン大統領は、司法省との距離を開けることによって、トランプ氏に対する刑事捜査が政治的動機づけに基づいたものではなく、公平であるという印象を米国民に与えようとしている。


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