2023年12月5日(火)

2024年米大統領選挙への道

2022年10月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプの強さは本物か?」である。11月8日の米中間選挙まで約40日になった。共和党予備選挙でドナルド・トランプ前米大統領が推薦した多くの候補が本選に進んだ。しかし、明らかにトランプ氏自身の人気に陰りが見える。 

 共和党支持者は、トランプ前大統領の24年米大統領選挙への出馬を望んでいるのか。激戦州フロリダ州の有権者はトランプ氏をどのように捉えているのか。また、共和党予備選挙で同氏の推薦候補が本選に進んだ本当の理由は何か――。

9月23日ノースカロライナ州ウィルミントンでの集会に参加するトランプ支持者(REUTERS/AFLO)

アイデンティティの低下

 トランプ前大統領にアイデンティティを持つ共和党支持者の数が減少している。米NBCニュースの世論調査(22年9月9~13日実施)によると、共和党にアイデンティティを抱いていると答えた同党支持者は58%、トランプ氏に対しては33%であった。

 20年米大統領選挙の直前に行った同調査(同年10月実施)では、共和党よりもトランプ氏に対してアイデンティティがあると回答した同党支持者は54%あった。約2年間で21ポイントも減少したことになる。

 共和党は「トランプ党」や「MAGA共和党」(Make America Great Again:米国を再び偉大にする)と呼ばれており、党内おけるトランプ氏のパワー(権力)が絶大であると見られている。だが、共和党支持者のトランプ氏に対するアイデンティティの低下がはっきり現れており、同氏の人気に陰りが出ている。

トランプよりもデサンティス

 共和党支持者の間で、24年大統領候補を巡って意見が分かれている。米紙ワシントン・ポストと米ABCニュースの共同世論調査(22年9月18~21日実施)によれば、24年共和党大統領候補について、共和党支持者の47%が「トランプ氏」、46%が「トランプ氏以外」と回答し、拮抗した。

 2019年10月30日に発表した同調査では、共和党支持者の67%が「トランプ氏」、30%が「トランプ氏以外」と答えているので、「トランプ氏」が20ポイントも低下したことになる。

 各種世論調査によると、共和党内でトランプ前大統領の次に支持率が高いのは、南部フロリダ州知事のロン・デサンティス知事である。そこで、米サフォーク大学(東部マサチューセッツ州)と米紙USAトゥディが激戦州フロリダの有権者を対象に行った共同世論調査(22年9月15~18日実施)の結果をみると、40.4%がトランプ氏、51.6%がデサンティス氏に好感を抱いている。デサンティス氏がトランプ氏を約11ポイントリードしたのである。

 また、同調査では24年米大統領選挙が「トランプ対バイデン」になった場合、46.6%がトランプ前大統領、44.4%がバイデン大統領を支持すると回答した。その差は僅か2.2ポイントである。

 ところが、「デサンティス対バイデン」になると、51.8%がデサンティス知事、43.6%がバイデン大統領を支持すると答えており、デサンティス氏がバイデン氏を8.2ポイント引き離す。バイデン氏に対してフロリダ州の選挙人を獲得する可能性が高いのは、トランプ氏よりもデサンティス氏である。


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