2024年12月22日(日)

2024年米大統領選挙への道

2022年8月26日

 今回のテーマは「バイデンとトランプの中間選挙」である。ジョー・バイデン米大統領は11月8日、就任後初の中間選挙を迎える。中間選挙が本格化する9月5日のレイバー・デー(労働者の日)を前に、インフレ抑制法案を成立させた。バイデン氏は上院選で2議席の上乗せを狙う。

 一方、ドナルド・トランプ前大統領は激戦6州で推薦した候補を勝利に導き、24年大統領選挙出馬に勢いをつけたいところだ。

 バイデン氏の「インフレ抑制法案」、「退役軍人ヘルスヘア法案」および「学生ローンの返済免除」表明の本当の狙いは何か。また、民主党は上院で多数派を維持できるのであろうか。激戦6州におけるトランプ氏の勝敗はどのようになるのだろうか――。

(bearsky23/gettyimages)

インフレ抑制法案と「票の獲得」

 バイデン米大統領は8月16日に、4300億㌦(約58兆9000億円)規模のインフレ抑制法案に署名した。この法案は有権者、即ち「票」をかなり意識したものである。

 例えば、薬価引き下げは高齢者の票獲得に有効である。実際、薬価引き下げが実施されるのは25年以降だが、民主党は高齢者の票獲得を狙ってアピールするだろう(図表1)。

 また、電気自動車の新車購入者には、最大で7500㌦(約103万円)の税控除が与えられる。中古車の電気自動車を購入した場合、最大で4000㌦(約55万円)の税控除が得られる。これらは中間層を狙ったものだ。しかも、自動車産業が盛んな激戦州ミシガンやオハイオにプラス要因になる。

 さらに、インフレ抑制法案では気候変動対策に3690億㌦(約50兆5000億円)を投資する。米国が直面している最も重要な問題に、気候変動を挙げる民主党支持の若者を引き付けることは間違いない。

バイデンの財政赤字削減

 インフレ抑制法案にはインフレ削減に加えて、財政赤字削減も含まれている。これも売りになるだろう。

 大企業に対する法人税の最低税率の15%設定等により、約2000億㌦(約27兆円)の財政赤字削減が可能になる。トランプ氏とは異なり、バイデン氏は大統領就任以来、財政赤字削減に力を入れてきた。

 20年米大統領選挙において、筆者は西部ネバダ州で現地ヒアリング調査を行った際、配車サービス業に携わる「隠れトランプ」の若者に出会った。彼は民主党支持者であったが、16年米大統領選挙でトランプ候補(当時)に一票を投じたと明かした。

 だが、彼はトランプ氏が財政赤字を削減しなかったので、20年米大統領選挙では民主党大統領候補に投票すると語った。財政赤字削減を盛り込んだインフレ抑制法案は、このような若者を民主党につなぎ留める効果がある。


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