今回のテーマは「銃規制強化法案と中間選挙」である。米国では約30年ぶりに本格的な銃規制強化法案が超党派で、6月下旬に成立した。この新法案は「超党派による安全コミュニティ法案」と呼ばれ、21歳未満の銃購入者に対する身元確認の強化、著しく危険な人物から銃を没収する「レッドフラッグ法(警告法)」、学校警備およびメンタルヘルスプログラムなどに7億5000万ドル(約1020億円)が充てられる。
ただ、レッドフラッグ法がすでに存在する中西部イリノイ州ハイランドパークで、7月4日の独立記念日に銃乱射事件が発生しており、銃の問題解決への道のりは険しいと言わざるを得ない。11月8日の中間選挙に向けて、ジョー・バイデン米大統領は銃の問題に関してどのような対策を講じ、どの有権者層を標的にして、一体何をアピールしていくのであろうか――。
合衆国憲法修正第2条は無制限か?
米国は合衆国憲法修正第2条によって、「銃所持の権限」を認めている。バイデン大統領は1791年に成立した修正第2条について「絶対ではない」「制限がないわけではない」と主張し、「無制限ではない」という立場をとっている。
確かに約230年前に殺傷能力の高いAR-15型の銃器や、手軽にインターネットで購入・組立ができる製造番号のない「ゴーストガン(幽霊銃)」は想定されていなかっただろう。となれば、バイデン氏が指摘するように殺傷能力のある銃購入の禁止並びに銃の購入年齢の18歳から21歳への引き上げは当然だ。
だが米国社会では、銃乱射事件は銃自体ではなく精神疾患が問題であるという意見が過半数を超える。エコノミストと調査会社ユーガヴの共同世論調査(22年5月28~31日実施)によれば、「学校における銃乱射事件は銃ではなく、精神疾患が問題である」という声明に対して51%が賛成、41%が反対と回答した。銃乱射事件の原因を銃よりも精神疾患に帰する回答者が10ポイントも上回った。
特に20年米大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領に投票した有権者は、82%が銃ではなく精神疾患が問題であると答えた。これに対して、バイデン氏はAR-15型半自動小銃、アサルトライフル(突撃銃)や大容量弾倉の所有禁止を訴えている。