2022年7月1日(金)

2024年米大統領選挙への道

2022年5月17日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「ウルトラ-MAGA(マガ)キングと戦うバイデン」である。日本では映画「シン・ウルトラマン」が公開された。M78 星雲人のウルトラマンは、科学特捜隊のハヤタ隊員と命を共有する。

 一方、米国では「ウルトラ-MAGAキング」が登場した。と言っても、ドナルド・トランプ前大統領の新しいニックネームである。ウルトラ-MAGAに参加するトランプ支持者は、トランプ氏のために命を賭けて戦う決意を示したようだ。ジョー・バイデン米大統領はこれに対してどう戦うのか――。

(Alexandre Tziripouloff/gettyimages)

「11ポイントの計画」とは

 MAGAはトランプ前大統領のスローガンおよび支持者の運動体を指す「Make America Great Again(米国を再び偉大にする)」の頭文字をとったものである。共和党全国上院委員会で議長を務めるリック・スコット上院議員(南部フロリダ州)は、11ポイントから構成された米国を救済するための計画を発表した。

 11ポイントの計画には、①「教育」②「人種偏見のない平等」③「安全と犯罪」④「移民」⑤「経済と成長」⑥「政府改革と債務」⑦「不正のない選挙」⑧「家族」⑨「ジェンダー、生命、科学」⑩「宗教の自由と巨大テクノロジー企業」⑪「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」が含まれている。

 例えば、「教育」では「愛国心を鼓舞する」「急進左派の歴史修正主義を教育するのを止める」ことを提案している。「人種偏見のない平等」では、人種並びに価値観の多様性を促進するトレーニングや、「人種差別の根源は社会の仕組みや法律に組み込まれている」という「批判的人種理論(CTR: Critical Race Theory)」を否定している。民主党が支持する米軍における多様性トレーニングおよび、公立学校での批判的人種理論に関する授業の停止を求めているのだ。

 次に「安全と犯罪」では、警察に対する予算削減反対を訴えている。「移民」ではトランプ前大統領が唱えたメキシコとの国境の壁建設を正当化した。

 さらに「経済と成長」では、社会主義は貧困と抑圧を導くと警告を発した。「政府改革と債務」では、米連邦議員の任期を最高12年にすると提案している。また債務削減を約束した。

トランプ色の濃い「ウルトラ-MAGAアジェンダ」

 特にトランプ氏の色合いが強く出ているのが、「不正のない選挙」である。民主党が不正選挙を行っていると批判しているのだ。その上で、急進左派が民主主義を破壊することを許さないと強く訴えている。正にトランプ氏の主張である。

 「家族」では、狂信的な左翼が伝統的な家族を再定義していると批判した。「ジェンダー、生命、科学」では人工妊娠中絶は殺人であると断言した。民主党左派を標的にしていることは明らかだ。

 「宗教の自由と巨大テクノロジー企業」の箇所は注目に値するだろう。民主党と巨大テクノロジー企業の同盟が、キリスト教とユダヤ教の信仰に敵対するウォークネス(wokeness)という新興宗教を創造したというのだ。ウォークネスはwoke(目覚めた)を名詞形にしたもので、「社会的不公正や人種および性差別に対する高い意識を持った状態」であり(英辞郎)、「一歩進んで問題の解決に取り組もうとする状態」でもある(イミダス)。

 最後にトランプ氏が掲げている「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」に関して、「米国はエネルギーやサプライチェーン(供給網)において他国には依存しない」と述べている。以上の11ポイントを「ウルトラ-MAGAアジェンダ」と呼ぶ。今秋の中間選挙を見据えて設定したものである。

 すでに「ウルトラ-MAGAアジェンダ」は共和党議員から支持を得ている。共和党下院ナンバー3のイリース・ステファニック議員(東部ニューヨーク州第21選挙区選出)は、「私はウルトラ-MAGAだ。誇りに思っている」と記者団に語った。今後、中間選挙に向けて共和党内に「ウルトラ-MAGA候補」が続々と現れるだろう。

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