2022年9月27日(火)

2024年米大統領選挙への道

2022年4月30日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「3人の『勝利の意味』プーチン、バイデン、ゼレンスキー」である。ロシアによるウクライナ侵攻は2カ月以上を経過したが、停戦合意の目途はまったく立っていない。ウクライナ軍や市民の激しい抵抗に会っているウラジーミル・プーチン露大統領は強気の姿勢を崩していない。

 一方、ジョー・バイデン米大統領はウクライナ東部のドンバス戦を見据えてウクライナへの軍事支援を加速させている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は自由のために戦い続ける意思を示している。プーチン、バイデン、ゼレンスキーの3氏は勝利をどう捉えているのか――。

(Leestat/gettyimages)

どちらの国が勝利するのか?

 まずロシアとウクライナの戦争における勝利に関するエコノミストと調査会社ユーゴブによる共同世論調査(2022年4月16~19日実施)の結果をみてみよう。同調査によれば、「ロシアとウクライナの戦争でどちらの国が最終的に勝利を収めると思いますか?」という質問に対して、29%が「ウクライナ」、24%が「ロシア」、15%が「引き分け」、32%が「分からない」と回答した。

 ただし、20年米大統領選挙でバイデン氏に投票をした有権者は、42%がウクライナ、17%がロシアと答えた。「ウクライナ勝利」が「ロシア勝利」を25ポイントも上回った。

 党派別にみると、民主党支持者は18ポイント差、共和党支持者は3ポイント差で、ウクライナがロシアに勝利すると答えた。逆に無党派層は4ポイント差で、ロシア勝利を予測した。勝利に関する温度差が顕著に出た。

 バイデン大統領のゼレンスキー政権への軍事面、経済面および人道面における支援や、ロシアに対する経済制裁を支持する民主党支持者の中には、ウクライナ勝利を強く願望する者が少なくないだろう。彼らの心理的要因が数字に影響を及ぼしているといえそうだ。

「勝利の再定義」の連続

 ロシア軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺から撤退して東部に兵力を集中させたとき、ホワイトハウスのケイト・ベティングフィールド広報部長は定例記者会見で、ロシアが「勝利の再定義」を行っていると記者団に述べた。ゼレンスキー体制転換と傀儡政権樹立を実現できなかったので、代わりにウクライナ東部における完全掌握を勝利として再定義したというのである。

 ところがロシア軍は南東部の港湾都市マリウポリでも完全掌握できないまま部隊を東部ドンバス地域に移し、同地域での戦いに傾注することになった。プーチン大統領はマリウポリ攻防戦に関して「成功」と述べてロシア軍を称えたが、アゾフスターリ製鉄所にはウクライナ海兵隊および義勇軍アゾフ大隊や市民が立てこもり、徹底抗戦の構えを続けている。

 つまり、プーチン氏はマリウポリにおける「部分的な勝利」を「明確な勝利」にすり替えた発言を行ったのである。ベティングフィールド広報部長の言葉を借りれば、ここでも勝利の再定義をしたといえる。

 キーウやマリウポリを完全制圧できなかったプーチン大統領は、勝利の再定義をせざるを得ない状況に置かれている。今や、勝利の再定義はプーチン氏の情報戦略の1つに含まれたのである。

新着記事

»もっと見る