2025年2月14日(金)

キーワードから学ぶアメリカ

2025年1月21日

 2025年1月20日、第二次トランプ政権が発足する。大統領選挙時から、ドナルド・トランプ氏は就任初日から独裁者になって大統領令を活用すると宣言し、自らの政敵に対する報復も宣言していた。第一次政権期と比べても政権スタッフを忠誠心の高い人物中心で固めようとする姿勢からも、第二次トランプ政権は過激な行動をとるのではないかと予想されている。

第二次トランプ政権は必ずしも前途洋洋ではない(ロイター/アフロ)

 だが、第二次トランプ政権を取り巻く政治環境はトランプにとって好ましいものではない。

史上稀に見る僅差の連邦議会

 24年11月の米国大統領選挙では、選挙人の獲得数が民主党(カマラ・ハリス、ティム・ウォルツ)の226に対し、共和党(トランプ、J.D.ヴァンス)が312と大きな差がついたこともあり、トランプ陣営は「圧勝」を宣言した。だが実際の得票率の差は2%未満と接戦だった。

 選挙結果確定までに数日かかると筆者も含む多くの識者が想定していたが、そうならなかったのは、これまで開票が遅かったペンシルベニア州やジョージア州が開票を迅速に行ったことによるものであって、得票数でトランプが圧倒していたからではない。

 また、同日に行われた連邦議会議員選挙の結果、共和党が上下両院で多数を占めて共和党による統一政府(いわゆるトリプル・レッド)が達成された。だが、議席数は非常に小さく、さらにトランプは共和党の現職の連邦議会議員を閣僚や政権スタッフの候補に指名したため、この差はさらに縮まった。権力分立が厳格な米国では、政権入りした人は連邦議会議員の職を辞する必要がある。

 そのため、1月3日に始まった第119議会は、上院が共和党51、民主党系47(民主党系無所属2を含む)、空席2、下院が共和党219、民主党215、空席1と、歴史上稀に見る僅差である。米国政治の分断と拮抗、対立激化という趨勢は、今回の大統領選挙を経ても変わることがないだろう。

 第119議会は共和党による統一政府の状態であるため、分割政府の時期と比べれば、政治的安定性は高くなった。少なくとも、予算が成立せずに連邦政府が一時閉鎖する可能性は、分割政府の時期と比べると低いだろう。分割政府ならば政府が一時閉鎖した場合でも「相手の政党に責任がある」と主張することができるが、統一政府下では多数党たる共和党に責任があるのは明白なので、共和党に予算を通すインセンティブが生まれるためである。

 だが、近年の米国では、二大政党間の対立が激化しているために他党の提出した法案に賛成する議員がほぼいない状態となっている。共和党が民主党議員から協力を得ることは期待できない(民主党内で穏健派とされていたジョー・マンチン議員もキルステン・シネマ議員も第118議会中に無党派を経て引退した)。

 そのため、法案を通過させるためにはほぼ全ての共和党議員の賛同が必要になる。これは、党内の強硬派や非主流派の主張に配慮しなければ法案が通過しない可能性が高いことを意味している。


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