2025年は米国の政権交代、それがもたらす国内、世界で大転換が起きる可能性がある。バイデン民主党政権は実績として何を残し、そして第二次トランプ共和党政権はそれをどう変えようと考えているのか。
バイデンの〝実績〟も転換か
波乱含みのトランプ次期政権のかじ取りを論じる前に、バイデン政権の4年間をおさらいしておく必要がある。
まず、国内問題の最大関心事だった経済については、2020年就任前まで比較的好調に推移してきたが、政権発足後、インフレ上昇にともなう購買力低下、株価低落などで、一時的に企業活動停滞を招く結果となった。
しかし、22年までには、財政規律政策などの効果によりインフレ率は着実に安定化に向かい、当初の10%から2.4%にまで大幅改善された。
中でも、「2021年インフラ活性化法」、半導体企業積極支援、「2022インフレ低減法」の下でのクリーン・エネルギー・プロジェクトなどは一定の評価につながった。
この結果、全体雇用、製造業雇用、株価動向、1人当たり国内総生産(GDP)、個人所得、インフレ率に関する「Moody‘sAnalytical Data」を基礎にした「Yahoo Finance Bidenomics Report Card」は、就任当初の評価を「B+」から後半には「A」に引き上げた。
ただ、政権移行直前の1月3日、日本製鉄によるUSスチール買収計画却下の決断を下したことは、大統領が就任以来、同盟関係重視の立場から日欧諸国の対米投資を歓迎してきた従来の立場を逆行させるものであり、大きな汚点を残した。
知日派の議員、政府関係者、学者の間では、今後の日米同盟関係への影響を懸念する声が出始めている。
外交面では、ロシアによるウクライナ軍事侵攻を事前に察知し、早くから欧州近隣諸国に警告を発するとともに、アジア太平洋地域含めグローバル規模の同盟・有志諸国の結束と比較的素早い対ウクライナ軍事・経済支援体制を確立した。
対中国政策においても、拡大する脅威に対処するため、トランプ前政権下で動揺と混乱を招いた欧州・アジア同盟諸国との関係再構築に腐心した。22年2月に発表された「インド太平洋戦略」はその一環であり、米軍の地域関与強化・拡大を意図したものだった。台湾に対しても、38億ドル相当の武器援助に踏み切るなど抑止力向上を重視してきた。
大統領自らも4年間の任期中に2度、アジア歴訪に乗り出し、日米豪印4カ国首脳による「安保対話」などを立ち上げた。
依然、ウクライナ、中東ガザ紛争など未解決の問題を残したままだが、総じて、バイデン政権の4年間は、トランプ前政権が内外政策両面で一貫性のない場当たり的なものだっただけに、一定の実績を残したと言える。
ところが、昨年11月の大統領選に向けた民主党候補指名獲得レースをめぐり、81歳の高齢にもかかわらず、引き際を間違えたために党内大混乱を引き起こし、結果的にトランプ返り咲きを招いた。そして、これまでのプラス評価が帳消しされる懸念さえも出ている。トランプ次期政権が、現政権の政策を軒並み転換させる構えを見せているからだ。