26年の中間選挙を控える議員はトランプを敵に回すことは好ましくないと考える可能性が高いため、少なくとも中間選挙まではトランプと歩調を合わせて行動する可能性が高いだろう。だが、26年での引退を考えている議員や、26年が改選年にあたらない上院議員は政権の方針に反する行動をとる可能性もある。統一政府の状態であっても、政治的混乱が発生する可能性は十分に考えられるだろう。
読みが外れた予算案
実際、第二次トランプ政権期に、共和党が一枚岩となって行動するとは限らないこと、そして共和党多数議会がトランプの希望通りに運営されるとは限らないことが、24年末以降の動きの中で明らかになりつつある。
まず、24年末のつなぎ予算案をめぐる動きは、トランプの意向に反する共和党議員が存在することを明らかにした。当初二大政党が合意していたつなぎ予算案は、連邦政府の一時閉鎖も辞さずとするイーロン・マスクとトランプの意向により白紙に戻された。
マスクやトランプは、政府の支出を議会で決定する際、債務上限の引き上げを条件にすべきだと主張した。その後、トランプも支持する予算案が提出されたが、共和党からも35人を超える議員が反対票を投じたため、マスクとトランプの試みは失敗に終わった。
また、第119議会の発足に際して下院議長にマイク・ジョンソンが再任されたが、その際にも共和党は団結できなかった。債務膨張を懸念する保守強硬派が当初反対の意向を示したためである。
興味深いのは、この二つの例で反対の立場を示したのは、保守派議員だったことである。第一次トランプ政権期にトランプに反対したり、共和党の団結を乱したりしたのは穏健派だったのとは対照的である。
伝統的に共和党は、小さな政府の立場を示す財政保守派、人工妊娠中絶などの問題を重視する社会的保守派、強いアメリカを求める軍事的保守派の寄り合い所帯だと評されてきた。それに、トランプ派が加わったのが今日の共和党である。民主党政権に反対するためには相容れない立場の人々も団結することができたが、共和党が権力を握ると路線対立が鮮明になる可能性が高くなる。
トランプは減税を主張するものの、公共事業の拡充などの政府支出の増大を必要とする政策を支持している。また、トランプが主張する不法移民の強制送還なども、多くの費用と人員を必要とする。
このようなトランプの立場に財政的保守派は不満を抱いている。第二次トランプ政権における最大の注目点は、連邦議会内における保守強硬派、とりわけ財政的保守派が、トランプの方針をどの程度まで許容するかになるだろう。
大統領令も連邦議会の協力は必要
米国は権力分立が強固に制度化されているため、とりわけ内政面では政権が単独でできることが限られている。だが、連邦議会の共和党多数派が望んでおり、トランプも反対していない政策については、実現する見込みが高くなるだろう。
例えば、大規模減税の恒久化や化石資源開発の支援などは、委員会の決定通り連邦議会を通過する可能性が高いと考えられる。上院で討議を長時間続けて議事進行を意図的に遅延させるフィリバスターを回避するためには60議席が必要だが、予算に直接関連させる形で立法化すればフィリバスターを回避して成立させることができる。
