2022年10月5日(水)

2024年米大統領選挙への道

2022年3月18日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「なぜバイデンはレッドラインを宣言しないのか?」である。ロシアのウクライナ侵攻が4週目に入った。その間、ウクライナでの悲惨な状況が映像を通じて全世界に流れている。中でも、産科・小児科病院へのロシア軍の攻撃により死亡した妊婦とお腹の中の赤ちゃんの報道は衝撃的であった。

 果たして、ウクライナ危機を巡る米国民の意識に変化はあるのか。

 民間人や子どもまでを標的にしたロシア軍の軍事攻撃が行われているのにも関わらず、ジョー・バイデン米大統領は、レッドライン(超えてはならない一線)を設定しない。なぜバイデン大統領はレッドラインを宣言しないのか。本当にバイデン氏にはレッドラインが存在しないのか―ー。

(fotojog/gettyimages)

飛行禁止区域を巡るバイデンと支持者のズレ

 ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はウクライナ上空の飛行禁止区域の設定を米国と北大西洋条約機構(NATO)に強く求めている。一方、バイデン大統領は設定に否定的な考えを示している。では、米国民も飛行禁止区域の設定に反対なのか。

 エコノミストと調査会社ユーゴブの共同世論調査(22年3月12~15日実施)によれば、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定に関して38%が「良い考え」、27%が「悪い考え」と回答した。肯定派が否定派を11ポイント上回った。

 前回の同調査(同月5~8日実施)では40%が「良い考え」、30%が「悪い考え」と回答した。肯定派と否定派の差は10ポイントであった。

 今回と前回の両調査において、いずれもウクライナ上空の飛行禁止区域の設定について肯定派が否定派をリードした。バイデン支持者はどのように捉えているのだろうか。

 2020年米大統領選挙でバイデン氏に投票した支持者の41%が「良い考え」、25%が「悪い考え」と答えた。バイデン支持者では肯定派の支持率が否定派を16ポイントも引き離した。ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定を巡って、バイデン大統領と支持者の間に明らかなズレが生じている。

映像の力

 ゼレンスキー大統領は3月16日米議会でオンライン形式の演説を行い、冒頭専制主義からウクライナと米国の共通の価値観である民主主義および自由を擁護することの重要性に訴えた。その上で、米国民に向かってウクライナ上空の飛行禁止区域設定の必要性を主張した。

 さらに、ゼレンスキー氏はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の有名な演説の一節を引用し、「私には夢がある。ウクライナ人には夢がある。米国人には夢がある」と強調した。その後、ウクライナが直面している悲惨な事態をまとめたビデオを紹介した。このビデオにはロシア軍の残忍な行動によってウクライナ人の夢が打ち砕かれる様子が生々しく描かれていた。

 ゼレンスキー大統領の演説を直接聞いたジェリー・コノリー下院議員(民主党・南部バージニア州第11選挙区選出)は、筆者にメールをくれ、「感激した」と語っていた。

 米国民は今後も映像を通じて、ウクライナで起きている恐ろしい光景を目にし、それに影響を受ければ、飛行禁止区域設定の支持率が上昇する可能性が高い。となるとバイデン氏はロシアとの直接的な軍事衝突を回避するために設定しないと議論しているが、説得力に欠けることになるだろう。

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