2024年4月20日(土)

2024年米大統領選挙への道

2022年1月26日

 今回のテーマは「2年目を迎えたバイデンの新戦略」である。ジョー・バイデン大統領は1月19日(現地時間)、ホワイトハウスで1時間51分に及ぶマラソン記者会見を行い、就任1年目を振り返った。バイデン大統領はこの1年をどう総括したのか。日本ではほとんど報道されていないが、バイデン氏はワシントンにいる連邦議会議員およびホワイトハウス担当記者にとって、オミクロン株や物価上昇、ウクライナ危機よりも注目すべきある発言をした。その発言とは何か。そして就任2年目のバイデン氏はどのような新戦略で巻き返しを図るのか――。

(GummyBone/gettyimages)

バイデン政権1年目の成果と課題

 バイデン大統領は記者会見の冒頭、2億1000万人がワクチン接種を完了したと述べた。続いて、600万人以上の新規雇用創出と3.9%という記録的な低い失業率を強調した。

 サプライチェーン(供給網)にも触れ、コロナ前と比較すると商品の供給は89%まで戻ってきていると説明した。つまり、コロナ対策と経済で成果を出したという認識を示した。

 加えて、子どもの貧困を40%に減少させ、コロナ禍においても95%の学校で対面授業を再開させたと主張した。育児支援と教育でも成果を上げたというメッセージを発信した。

 ただ、米国社会は物価上昇という深刻な課題を抱えている。支持率低迷の一因は、物価上昇がバイデン氏の支持基盤である中間層や労働者を直撃しているからだ。

 バイデン氏はこの事実を認めながらも、ノーベル経済学賞を受賞した17人の経済学者が、10年間で総額1.75兆ドル(約200兆円)規模の「大型歳出法案が成立すればインフレを抑えられると語っている」と述べて批判をかわした。

 記者会見でバイデン大統領が列挙した成果は、すべて内政であった。バイデン氏がこの1年を外交ではなく、内政にかなりの時間とエネルギーを費やしてきたことが分かる。

 今秋の中間選挙を控え、バイデン氏はさらに内政に突き進むのか、それとも外交で活路見出すのかもこの記者会見の見どころであった。

バイデン政権1年目の評価

 バイデン大統領は21年3月に成立した1.9兆ドル(約220兆円)規模の「米国救済計画法案」を通じて、同年7月15~12月15日まで、毎月15日に17歳以下の子どもがいる中低所得者の世帯を対象に、現金給付を持続的に行ってきた。これは高く評価されるべきである。

 さらに、バイデン大統領が人種やジェンダーの多様性に富んだ連邦判事を指名したことも注目すべきだ。ドナルド・トランプ前大統領は就任1年目に19人の連邦判事を指名した。4年間で合計226人の連邦判事を指名したが、大半が白人男性である。非白人はわずか16%で、女性は24%であった。

 一方、バイデン大統領は1年目に40人の連邦判事を指名した。その中には、アフリカ系女性判事やLGBTQ(性的マイノリティ)を公表した初の女性判事および、イスラム教徒の判事が含まれている。バイデン氏が指名した連邦判事は、65%が非白人で、74%が女性という構成になっており、マイノリティ中心の連邦判事といえる。この点も評価してよいだろう。

 今後、バイデン氏は超党派で成立した1兆ドル(約115兆円)規模のインフラ投資法案を通じて、全国の橋や道路などの修理並びに鉛の水道管の取り換えといった大規模なインフラ整備を実現できれば、さらに多くの成果を出すことになるだろう。特に水質汚染反対の立場を強く出せば、民主党の急進左派のみならず無党派層を含めた幅広い層から支持を得ることは間違いない。


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