2022年7月6日(水)

2024年米大統領選挙への道

2021年12月28日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 第2回のテーマは「バイデンの支持率は回復するのか?」である。ジョー・バイデン米大統領の支持率は、アフガニスタンからの米軍撤退の混乱を機に低下傾向にある。米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」によれば、バイデン大統領の各種世論調査の平均支持率(21年12月1~21 日)は44%で、平均不支持率は53%であった。9ポイント不支持が支持を上回った(注)。

 ただ、ロイター通信とグローバル調査会社イプソスによる共同世論調査(同月15~17日実施)では、バイデン大統領の支持率は48%で、不支持率は46%であった。支持が不支持を2ポイントリードしており、やや改善の兆しが見える。

 バイデン大統領はどのような思いでアフガン撤退を決定したのであろうか。また、バイデン氏は自身の支持率をどのように捉えているのだろうか。22年11月8日の中間選挙に向けて何に焦点を当てて選挙戦を戦おうと考えているのだろうか――。

12月15日、ケンタッキー州ドーソン・スプリングズを訪れて被災者を慰問したバイデン大統領(REUTERS/Evelyn Hockstein/AFLO)

アフガニスタン撤退の「本当の理由」

 なぜバイデン氏はアフガニスタンからの強硬な米軍撤退を指示したのだろうか。その背景には長男ボー氏の存在があったとみられる。

 東部デラウェア州の司法長官であったボー氏は、イラク従軍として仕え、戦死こそしなかったが帰国後脳腫瘍を患い、46歳の若さでこの世を去った。米メディアは米軍がイラクで約140トンもの廃棄物を燃やしたと報道している。ボー氏はこの廃棄物の有毒ガスを吸っていた。

 バイデン大統領はボー氏の脳腫瘍と有毒ガスとの間に因果関係があると信じているといわれている。バイデン氏がアフガン戦争について「目的のない戦争に息子や娘、孫を送るわけにはいかない」と一貫して主張を曲げなかったのは、ボー氏の死亡が少なからず影響を与えているからだろう。

 さらに、バイデン大統領の演説の言葉にもボー氏に対する思いが込められている。一般に米大統領は「米国に神のご加護がありますように」と述べて演説を締めくくる。ところがバイデン氏は大抵の場合、その後に「米軍に神のご加護がありますように」と加えて演説を終える。従軍経験のない3人の息子を持ち、陣営のスローガンを唱えて演説を終了するドナルド・トランプ前大統領の口からは滅多に聞けない言葉である。

 バイデン氏にとって明確な目的のないアフガン戦争からの米軍撤退は正に若い兵士の「命の救済」であり、自身の支持率低下とは比較にならないほど重い意味が含まれていたのである。

支持率回復のカギ―「より良い再建」法案

 身内の与党民主党ジョン・マンチン上院議員(南部ウエスト・バージニア州)の反対により、10年間で総額1兆7500億㌦(約200兆円)規模の大型歳出法案である「より良い再建:Build Back Better 略称BBB」法案の年内成立がほぼなくなった。新型コロナウイルス対策及びサプライチェーン(供給網)の安定化に加えて、この法案の早期成立が支持率回復のカギを握っていることは間違いない。というのは、同法案にはバイデン大統領の支持基盤である中間層を助けて、彼らの家計の支出を減らす狙いがあるからだ。

 例えば、幼児教育の無償化である。バイデン大統領は3、4歳児の幼児教育の無償化を主張している。トップ1パーセントの超富裕層に対する連邦所得税をトランプ前政権の37%から39.6%に戻せば、年間200億ドル(約2兆2900億円)の収入が増えるので、それを幼児教育の無償化に充てる考えだ。

 バイデン大統領は中・低所得者を対象にした「子ども減税」の継続の重要性も強調している。21年7月15日から毎月15日に17歳以下の子どもがいる中・低所得者の世帯を対象に小切手ないし現金による給付を実施してきた。

 ところが、12月15日をもってこの支援は終了した。バイデン大統領は「より良い再建」法案を通じて、持続的な支援を行う意思を示している。日本のように1回限りの10万円相当の現金給付ではなく、給付金の持続性を重視しているのだ。

 「より良い再建」法案には薬価対策も含まれている。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官によれば、米国では約30%の国民は処方箋をもらっても、薬価が高いために支払えず薬を購入できない。月に1000㌦(約11万円)以上もインシュリンに費やしている国民もいる。そこでバイデン大統領は同法案によりインシュリン代の上限を月35㌦(約4000円)に抑えると述べた。

 中間層重視のバイデン氏は、今「より良い再建」法案成立のための大幅な戦略の見直しが求められている。秋の中間選挙が本格的になれば党派対立が一層先鋭化し、法案の成立は困難になるからだ。

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