2022年7月6日(水)

2024年米大統領選挙への道

2021年12月13日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

熱狂的な支持者に指をさすトランプ米大統領(筆者撮影@2020年2月、西部アリゾナ州フェニックス)

 これから2024年の米大統領選挙に向けた足元の動きを日本の読者の皆さんにお届けしていこうと思う。第1回のテーマは「2024年、トランプ再選のシナリオ」である。ドナルド・トランプ前米大統領は10月9日、中西部アイオワ州で支持者を集めた大規模集会を開催した。なぜアイオワ州なのか? 同州は最初の党員集会が開催される州であり、大統領選挙のスタート地点だからだ。

 冒頭、トランプ氏は「アフガニスタンはタリバンに奪われた。米国は急進左派の社会主義者に奪われた」と語気を強め、ジョー・バイデン大統領と議会民主党の双方を非難した。

 次の大統領選挙の出馬宣言はしなかったが、トランプ氏は敗れた20年大統領選挙の復讐心に燃えている。トランプ氏はどのような再選のシナリオを描いているのか――。

すでに始まっている“戦争”

 カマラ・ハリス副大統領の好感度が低下している。エコノミストと調査会社ユーゴブの共同世論調査(21年11月27日~30日実施)によれば、ハリス副大統領に対して45%が「好感を持てる」、49%が「好感を持てない」と回答した。「好感を持てない」が4ポイント上回っている。USAトゥデイ紙とサフォーク大学(東部マサチューセッツ州)の共同世論調査ではハリス氏の支持率は約28%。

 その主たる理由は、バイデン大統領から任された不法移民対策や投票権擁護において成果を出せないことだ。米国とメキシコの国境は中米の「北部三角地帯」と呼ばれるグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルからの急増する不法移民で混乱状態に陥っている。州議会で共和党が強い州では、民主党を支持するマイノリティ(少数派)の票を減らすために「投票抑圧法」が成立し、投票権が危機に直面している。

 ただ、ハリス氏の好感度と支持率低下の理由は、こればかりではない。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は記者団からのバイデン氏再出馬に関する質問に対して、「再出馬の意欲を示している」と回答した。1期4年で大統領職を退くと公言すれば、バイデン政権のレームダック(死に体)の早期化は避けられないからだ。

「ハリス潰し」作戦

 トランプ氏、共和党並びに保守系の米FOXニュースは民主党側のこの意図を読み取り、ハリス副大統領に焦点を当て激しく批判している。その背景には次の大統領選挙の前までに、本命のハリス氏の評価を下げる狙いがある。早くも「ハリス潰し」の作戦を開始したのだ。特に共和党は米国とメキシコの国境における不法移民の流入による混乱状態と、ハリス氏のリーダーシップ能力の欠如を結びつけて攻撃を加えている。

 これに対して、ハリス副大統領は防戦一方だ。仮にバイデン氏が出馬しない場合、民主党大統領候補指名争いでピート・ブティジェッジ運輸長官がライバルになる可能性がある。ブティジェッジ長官はインフラ投資法案で存在感を示した。共和党からも支持を得て、超党派で法案を可決させ、政治的得点を稼いだ。

ハリス氏のジレンマ

 一方、ハリス副大統領が取り組んでいる不法移民対策と投票権擁護はインフラ投資法案とは異なり、共和党から批判を受けやすく、コントロールも効かず、ハードルが高い問題になる。ハリス氏には焦りがある。

 加えてホワイトハウスが、バイデン氏が再出馬の意欲を示していると記者団に語ったことで、ハリス氏は自分が大統領候補のように振舞って本格的に反撃に出ることがでない。ハリス氏はこんなジレンマを抱えている。

 さらに悪いことに、ホワイトハウスではバイデン大統領とハリス副大統領の側近の間に緊張関係が存在し「ハリス外し」が行われていると、米メディアは報道している。その結果、ハリス氏の側近が相次いで辞任している。

 11月にオンラインで開催された米中首脳会談や、対面で行われたカナダ・メキシコとの首脳会談の席にハリス氏の姿はなかった。ホワイトハウスの内部対立もあり、24年大統領選挙を念頭に入れたトランプ氏と共和党の「ハリス潰し」は、現段階では功を奏していると言えそうだ。

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