2024年12月22日(日)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年7月29日

 今回のテーマは、「ワクチンと選挙、日米の政治家の類似点」です。毎日新聞デジタル(21年7月25日)によれば、国会議員が秋の総選挙をにらんで、選挙区内の自治体へのワクチン配分を増やすように厚生労働省に要求しています。地元の有権者に対するワクチン確保が、選挙の当落に影響を及ぼすというのです。

 米国でもワクチン接種を巡って、同様の動きが出てきました。ワクチン接種率の低い州では知事や議員が接種率を高めようと、本腰を入れ始めました。その背景には選挙があります。そこで本稿では、「ワクチンと選挙」に焦点を当てます。

(Leonid studio/gettyimages)

ワクチン未接種者によるパンデミック(感染病の世界的大流行)

 AP通信とNORCセンター(シカゴ大学)の最新の共同世論調査(21年7月15~19日実施)によれば、新型コロナウイルスのワクチン接種をしていない米国民の45%が「絶対にワクチンを接種しない」、35%が「おそらくワクチンを接種しない」と回答しました。つまり、ワクチン未接種者の8割が今後も接種しないというのです。

 同調査ではワクチン未接種者の64%が「ワクチンは新しい変異株に効果的ではない」と捉えていることも分かりました。

 年代別にみると、「絶対にワクチンを接種しない」と「おそらくワクチンを接種しない」の合計は、18~29歳で38%、30~44歳で36%になり、60歳以上と比較すると2倍以上です。

 党派別においても顕著な傾向が出ています。共和党支持者は「絶対にワクチンを接種しない」と「おそらくワクチンを接種しない」の合計が43%になり、無党派層の33%、民主党支持者の11%を10~30ポイント以上も上回っています。

 加えて、学歴とワクチン接種の関係にも注目してみましょう。高卒以下では「絶対にワクチンを接種しない」と「おそらくワクチンを接種しない」の合計は31%であるのに対して、大卒は18%です。大卒が高卒以下を13ポイント下回っています。周知の通り、ドナルド・トランプ前大統領の支持者は高卒以下、ジョー・バイデン大統領は大卒中心です。

 バイデン氏は米国でウイルスの感染が再度拡大している状況を「ワクチン未接種者によるパンデミック」と呼んでいます。上の世論調査結果で「絶対にワクチンを接種しない」及び「おそらくワクチンを接種しない」と回答した、いわゆる「ワクチン接種拒否者」「ワクチン不要論者」並びに「ワクチン懐疑論者」がウイルス感染拡大を招いているとみています。

「赤い州」とワクチン接種率

 米ワシントン・ポスト紙による州別のワクチン接種率に関するデータをみてみましょう。

 新型コロナウイルスのワクチン接種を完了した州民の割合は、南部アーカンソー州で36%、ルイジアナ州で36.6%、フロリダ州で48.5%、ミズーリ州で40.8%、ミシシッピー州で34.2%です。これらの5州はいづれも20年米大統領選挙において、トランプ前大統領が勝利を収めた「赤い州:レッドステート(大統領選挙で共和党が圧倒的に強い州)」です。

 一方、「青い州:ブルーステート(大統領選挙で民主党が圧倒的に強い州)」の1つである東部マサチューセッツ州のワクチン接種完了率は63.5%で、上で挙げた南部の州を15ポイント以上も引き離しています。

 ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は7月27日(現地時間)、フロリダ州では新規の入院患者の95%以上がワクチン未接種者だと述べました。加えて、「進化するウイルスとの戦争状態が続いている」と警告を発し、ワクチン未接種者に対して接種を呼びかけました。


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