今回のテーマは、「戸別訪問とワクチン接種率」です。日本では新型コロナウイルスのワクチン接種を巡って自治体、企業及び大学において「格差」が生じています。東京五輪開催まで10日余りになりましたが、一部の自治体、中小企業並びに医学部を持たない大学ではワクチン接種希望者が接種できないという状況が発生しています。
一方、米国ではワクチン接種希望者は誰でも予約なしに即座に接種できます。黒人居住区の中には、理髪店や美容院でワクチン接種が可能な地域があります。
ジョー・バイデン大統領は国民に明確なワクチン接種戦略を次々と
バイデン政権のワクチン接種戦略
バイデン大統領はワクチン接種に関して、戦略的に動いています。独立記念日の7月4日までに成人の70%が少なくとも1回のワクチン接種を済ませるという数値目標を達成するために6月2日、接種を促進するための具体的な戦略を発表しました。
まず、接種会場の接種時間を延長しました。ドラッグストアは金曜日のみですが6月の間、24時間営業してワクチン接種を行いました。
次に、「全国ワクチン接種促進ツアー」を企画しました。カマラ・ハリス副大統領が南部と中西部の州を訪問して、ワクチン接種を州民に促しました。加えて、ファーストレディのジル夫人、セカンドジェントルマンのダグ・エムホフ氏及び、閣僚クラスも全国ワクチン接種促進ツアーに参加しました。「オール・バイデン」でワクチン接種者数を増加させる戦略に出たのです。
加えて、従業員500人以下の中小企業を対象に控除を使ってワクチン接種回数を増加させました。ワクチン接種のために有給をとった従業員にかかったコストを控除の対象にする政策を打ち出したのです。従業員が副反応のために有給休暇をとった場合も、同様の措置が講じられました。
以上の戦略を立てましたが、バイデン氏は7月4日までに目標の接種率70%を達成できませんでした。米疾病対策センター(CDC)によれば、少なくとも1回のワクチン接種を受けた18歳以上の成人は67.5%で1億7435万人です(21年7月10日現在)。接種完了者は58.7%で1億5163万人になります。それでも1月20日にトランプ政権からバイデン政権に移行したとき、ワクチン接種完了者は約300万人でしたので、接種率はかなり高まったといえます。
「戸別訪問」によるワクチン接種率向上の運動
バイデン大統領は7月6日、ワクチン接種促進に関する新たな5つの戦略を立てました。
第1に、全国の4万2000店舗のドラッグストアでワクチン接種を行います。第2に、彼らを診察する「かかりつけ医」にワクチンを供給します。ワクチンに懐疑的な人は、政府ではなくかかりつけ医を信頼するからです。第3に、12~18歳の思春期の若者の接種率を高めるために、彼らを診察する「かかりつけ医」にワクチン供給を行います。第4に、職域接種を強化します。第5に、夏祭り、礼拝所及びスポーツイベント会場にワクチン巡回車を送ります。
ワクチン接種率が低い州、特に共和党が大統領選挙で強い州(レッドステート)で4月から実施してきた接種を促す「戸別訪問」は継続します。そもそも戸別訪問は投票率を高める選挙手法です。バイデン氏はそれをワクチン接種率向上のための運動に応用しました。ボランティアによる「草の根運動員」によりワクチン接種率を上げようという狙いがあります。