2024年12月7日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年7月21日

 今回のテーマは、「バイデンの訪問州と『新たな選挙人』の数」です。バイデン政権が発足してから7月20日で半年になりました。22年米中間選挙及び24年大統領選挙に向けて、ジョー・バイデン大統領は着々と準備を進めています。 

 バイデン大統領は就任以来、一体どの州を何回訪問したのでしょうか。その狙いはどこにあるのでしょうか。さらに、20年の米国勢調査結果に基づいて州別の人口増減によって配分された「新たな選挙人」は、バイデン氏の選挙戦略にどのような影響を与えるのでしょうか。

 本稿では、次の中間選挙並びに大統領選挙に向けたバイデン氏の動きを分析します。

(Michele Ursi/gettyimages)

訪問州の回数と意図

 バイデン大統領が就任以来、訪問した州と回数からある意図がはっきり読み取れます。地元東部デラウェア州と首都ワシントンに隣接する南部バージニア州の訪問回数が多いのは当然ですが、この2州を除くと東部ペンシルべニア州が4回、中西部ミシガン州が3回、ウィスコンシン州及び南部ジョージア州が2回になります(21年7月13日現在)。南部フロリダ、ノースカロライナ、テキサス並びにオクラホマなどの州もそれぞれ1回訪問しています。

 バイデン大統領は特にペンシルべニア、ミシガン、ウィスコンシンとジョージアの4州に力を入れていることが分かります。20年大統領選挙でバイデン氏はフロリダ州とノースカロライナ州を落としましたが、上の4州ではドナルド・トランプ前大統領に僅差で勝利を収めました。

 例えば、ペンシルべニア州は1.2ポイント、ミシガン州は2.8ポイント、ウィスコンシン州は0.7ポイントの差で、バイデン大統領はトランプ氏を破りました。ジョージア州は3回再集計が行われましたが、バイデン氏が僅か0.2ポイント差で勝利しました。バイデン氏は「私はジョージア州で(トランプ氏に)3回勝った」と語りました。

主戦場はジョージア州とペンシルベニア州

 バイデン大統領のジョージア州重視を示唆するある出来事を紹介しましょう。バイデン氏は政権発足100日のお祝いのイベントを地元デラウェア州ではなく、ジョージア州でカマラ・ハリス副大統領と一緒に開催しました。

 今年1月5日のジョージア州連邦上院決戦投票で、民主党は2議席を獲得し、議会上院の多数派を奪還しました。その結果、バイデン大統領は1.9兆ドル(約209兆円)規模の経済刺激法案である「米国救済計画法」を3月に成立させることができました。同法を通じて、17歳以下の子どもを持つ中間層を対象にした「子ども減税」が7月15日からスタートしました。

 おそらくバイデン大統領は来年秋の中間選挙でジョージア州に時間とエネルギーを注ぐでしょう。同州では現職のラファエル・ワーノック上院議員の再選の選挙が行われます。

 加えて、バイデン氏はペンシルべニア州も重点州にする可能性があります。というのは、共和党の現職パット・トゥーミー上院議員が再選を目指さないからです。民主党は東部ニューヨーク州やデラウェア州など近隣の州からボランティアの草の根運動員をペンシルべニア州に集めて、戸別訪問や電話による支持要請を行い、上院で1議席増やす戦略に出る公算があります。

 明らかにバイデン氏は、次の中間選挙と大統領選挙を見据えて各州を訪問しています。


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