2024年11月22日(金)

2024年米大統領選挙への道

2021年12月13日

共和党内でのトランプの地位は盤石か?

 共和党内では新しいライバルは見えないが、灯台下暗し、実はトランプ前大統領が足元でエラーをして、失脚するのを待っている潜在的な候補者がいる。

 まず、ロン・デサンティスフロリダ州知事から紹介しよう。デサンティス知事は元下院議員で、24年大統領選挙でトランプ氏が副大統領候補としてパートナーを組む可能性が高い人物だ。最大の保守派の政治団体「保守政治行動委員会(CPACシーパック)」で行われた24年共和党大統領候補に関する模擬投票では、デサンティス知事はトランプ氏に次いで2位だった。

 仮にトランプ前大統領がデサンティス知事を副大統領候補に指名すれば、20年大統領選挙に続いて激戦州フロリダ州で勝利するかもしれない。前回トランプ氏がバイデン氏に僅差で敗北した同州と隣接するジョージア州並びに西部アリゾナ州も奪回できるかもしれない。

 ただトランプ氏が嫉妬するほどの人気が出始めているデサンティス知事は、トランプ氏のエラーを待っているとの見方もできる。

「五輪全面的ボイコット」「中国は敵」

 次に対中国政策でタカ派のトム・コットン上院議員(南部アーカンソー州)。コットン上院議員は来年2月の北京冬季五輪に関して、「外交的ボイコット」ではなく「全面的ボイコット」を主張している。政府関係者のみならず選手団の派遣にも反対の立場をとり、米企業のスポンサーシップ禁止を訴えている。

 エコノミストとユーゴブの共同世論調査によると、共和党支持者の54%が中国を「敵」と回答した。また、同調査では20年にトランプ氏に投票した有権者の61%が中国を「敵」と答えた。コットン氏もトランプ氏のエラーを待ち、その間対中国強硬派の急先鋒としての自分を売り込み、有権者の認知度を高める戦略をとるだろう。その狙いはトランプ支持票の獲得にある。

 同様にトランプ前政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリー氏も対中国強硬派の1人で、北京冬季五輪「全面的ボイコット」を要求している。20年大統領選挙で敗北し2回の弾劾訴追を受けたトランプ前大統領について、ヘイリー元国連大使はポリティコ・マガジン誌の取材に対して「彼は(再出馬)できない」と指摘した。

 その後、ヘイリー氏はトーンを下げてAP通信にトランプ氏が再出馬すれば自分は出馬しないと語った。裏を返せば、トランプ氏が再出馬しなければ、出馬することになる。トランプ氏は、ヘイリー氏は自分に忠誠心が100%ないとみている。

 米政治専門サイト「ポリティコ」(12月3日付電子版)は、トランプ氏が別荘「マーラ・ア・ラーゴ」でヘイリー氏と面会したと報じた。詳細は明らかにされていないが、24年米大統領選挙について意見交換をしたとみてよい。

注目集まるペンス氏の動向

 トランプ前政権の副大統領を務めたマイク・ペンス氏も24年大統領選挙に出馬すると見られている。1月6日に発生した米連邦議会議事堂乱入事件に参加したトランプ支持者は、バイデン氏の獲得選挙人を承認したペンス氏を「裏切り者」とみなし、「絞首刑にしろ」と叫んだ。トランプ氏は米ABCニュースのジョナサン・カール記者とのインタビューの中で、支持者のこの発言に関して「当然だ」と述べている。トランプ・ペンス両氏の関係は良好だとはとても言えない。

 米議会専門紙「ザ・ヒル」によれば、トランプ前大統領は4月に行ったペンス前副大統領の心臓手術を、メディアを通じて知った。ペンス氏はトランプ氏に自身の心臓手術に関して伝えていなかった。このことからも両氏の関係が完全に修復したとは言い難い。

 前述したアイオワ州でのトランプ集会には、潜在的な候補者に圧力をかけて、共和党の予備選挙において自分に挑戦をさせないようにするというトランプ氏の思惑が見え隠れする。トランプ氏は自身に対して忠実に振舞っていたかつての子分たちによって、寝首をかかれる心配が全くないという訳ではないからだ。


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