2024年12月9日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年7月31日

 今回のテーマは、「バイデンの内政とミッション」です。ジョー・バイデン米大統領は労働者と中間層をかなり意識した政策を次々と打ち出しています。その狙いは、22年中間選挙と24年大統領選挙における労働者及び中間層の票の獲得にあることは間違いありません。

 では、バイデン大統領はどのような政策に訴えているのでしょうか。同大統領の政策は、果たして米国民から評価されているのでしょうか。そしてバイデン氏は何をミッション(使命)にして戦っているのでしょうか。本稿ではバイデン氏の内政とミッションについて述べます。

(REUTERS/AFLO)

トランプ前政権の「内容のない約束」

 バイデン大統領は7月28日、東部ペンシルべニア州にあるトラック製造工場で演説を行い、「バイ・アメリカン法」を用いて連邦政府が米国製の製品を買い上げると訴えました。現在米連邦政府が所有する車は60万台で、うち55%が米国製です。大半は郵便局の配達車です。

 バイデン氏は「55%では不十分だ。75%まで引き上げる」と固い決意を示すと、支持者から拍手喝采を浴びました。しかも、連邦政府の所有車を電気自動車(EV)に切り替える計画です。

 演説でバイデン大統領はトランプ前政権の米国製品を購入する政策は、「内容のない約束だった」と批判しました。「単なる掛け声だった」と言いたいのでしょう。

 確かに、トランプ前大統領は支持者を集めた大規模集会で「メイド・イン・USA」及び「バイ・アメリカン(Buy American)」を繰り返し主張して、国内の製造業重視の姿勢を打ち出しましたが、具体的な政策については触れませんでした。

 一方、バイデン氏は「バイ・アメリカン法」を前面に出し、ホワイトハウスに「メイド・イン・アメリカ・オフィス」を設置して実行性の高さをアピールしました。バイデン大統領は超党派で成立した「半導体法(CHIPS Act)」を通じて、500億ドル(約5兆4700億円)を投資して、米国内に半導体工場を建設すると述べました。

 「バイ・アメリカン法」の活用と「半導体工場の建設」には、少なくとも3つの狙いがあります。第1に中国との競争に勝つこと、第2にトランプ氏から労働者の支持を奪うこと、第3に労働者層の票を獲得することです。

内政の支持率

 AP通信とNORCセンター(シカゴ大学)の最新の共同世論調査(21年7月15~19日実施)によれば、バイデン大統領の支持率は59%で、不支持率は41%です。支持率が不支持率を18ポイントも上回っています。前回の同調査(同年6月10~14日実施)では支持率が55%、不支持率が44%でしたので、支持率が4ポイント上がり、不支持率が3ポイント下がったことになります。

 同調査では、バイデン氏の新型コロナウイルス対応に関する支持率は66%で、不支持率は33%です。支持率が不支持率を2倍も上回っています。「子どものある世帯を対象にした減税」の支持率は55%、「コミュニティカレッジ(短大)における授業料無料」は54%、「3、4歳の子どもの義務教育化」は67%で、バイデン氏肝いりの政策はいずれも米国民から支持を確実に得ています。

 では、米国民は法人税増税についてはどのような評価を下しているのでしょうか。ペンシルべニア州での演説で、バイデン大統領は400億ドル(約4兆3800億円)以上の売り上げがある55の大企業が過去3年間、法人税を全く払っていないと非難しました。加えてバイデン氏は、超富裕層は「税の抜け穴」を利用して納税していないと批判しています。

 バイデン氏の税制改革に関する議論は、米国民から支持されています。66%が法人税増税、64%が年収40万ドル(約4400万円)以上の世帯への増税に賛成しています。 

 同調査から労働者層及び中間層を狙ったバイデン氏の政策は、米国民から一定の評価を得ていることが分かります。


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