2024年12月6日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年7月31日

バイデンのミッション

 米ワシントン・ポスト紙の調査報道記者キャロル・レオニグ氏とホワイトハウス元担当記者フィリップ・ラッカー氏は、21年3月に南部フロリダ州にあるトランプ前大統領の別荘「マール・ア・ラーゴ」で、同大統領に行ったインタビューのテープの一部を公開しました。

 トランプ氏はそのインタビューの中で、同年1月6日に発生したトランプ支持者による米連邦議会議事堂乱入事件に関して、「大部分は平和的であった」と述べて、暴徒を「愛情のある群衆」と呼んでいます。

 しかし、事実は異なります。議事堂乱入事件により5人が死亡し、約140人が負傷して500人以上が起訴されました。起訴された暴徒は40州以上から首都ワシントンにかけつけて、事件に関与していました。

 トランプ前大統領は「暴徒は議会警官によって案内された」とも語りました。議会警官の中にトランプ支持者に同調する者がいたことを明かしました。「個人的に私が欲していたことは彼ら(暴徒)が欲していたことだ」と述べて、暴徒の言動を正当化しているとも聞こえる発言をしました。

 さらに、トランプ氏は議事堂乱入事件の当日、議会で20年大統領選挙における獲得選挙人の数を確認していたマイク・ペンス元副大統領に「大変失望した」と語りました。そのうえで、24年大統領選挙に自分が再出馬した場合、ペンス氏を副大統領候補に指名しないことを示唆しました。

 レオニグ記者は「トランプ氏は米国人の生命と民主主義を危険にさらした」と指摘し、「(同氏の)主たる目的は大統領の座に留まることであった」と分析しました。

 米議会議事堂乱入事件に関して、バイデン大統領は「1月6日に何も起きなかったとは言えない」と反論し、トランプ氏と一部の共和党議員の中にみられる乱入事件の矮小化の動きをけん制しました。国内外の民主主義の危機を強く懸念しているバイデン氏は、第46代米大統領としての自身のミッションを「民主主義の死守」と位置付けています。

  
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