「共和党の竜巻も、民主党の竜巻もない」
トランプ前大統領の地盤である南部ケンタッキー州と、中西部を中心に発生した大規模な竜巻は甚大な被害をもたらした。ケンタッキー州は前回の大統領選挙でトランプ氏がバイデン氏に対して26ポイントもの差をつけて勝利した「赤い州(共和党が強い州)」である。
ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事は共和党であり、米議会共和党上院のリーダーミッチ・マコネル院内総務は同州選出の議員である。バイデン大統領は12月15日現地を視察して、「共和党の竜巻も、民主党の竜巻もない」と強調し、連邦政府による長期にわたる全面的支援を約束した。
バイデン大統領はベシア知事と一緒に被災地を回り、被災者に語り掛け、握手をして肩を組み、彼らの声に耳を傾けた。
また、被災地の子どもと手をつないで「私の新しい友達だ」と言ってメディアに紹介した。子ども好きなバイデン氏の人柄がにじみでていた。
バイデン大統領が被災者とのスキンシップにおいて優れた能力を発揮し、共和党知事と協力して、超党派で大規模災害に取り組む様子が全米に流れた。バイデン氏の被災者に寄り添う「共感型コミュニケーション」と、超党派で協働して災害に立ち向かう姿勢が、支持率に若干だがプラスに働いたのかもしれない。
「黒人」と「大卒白人女性」の支持率
バイデン氏の支持率の強みは「黒人」と「大卒白人女性」である。エコノミストと調査会社ユー・ゴブの共同世論調査(21年12月19~21日実施)によれば、バイデン氏の支持率は42%だが、黒人は63%で全体の支持率を20ポイント以上もリードしている。米公共ラジオ(NPR)、公共テレビ(PBS)及び米マリスト大学(東部ニューヨーク州)の共同世論調査(同月11~13日実施)では、バイデン氏の大卒白人女性の支持率は約60%であった。
バイデン大統領は中間選挙に向けて、特に黒人と大卒白人女性の支持率を伸ばす戦略に出るだろう。その核となる戦略が「自由投票法案」と「ジョン・ルイス投票促進法案」の成立である。
背景には共和党が支配する州議会において、民主党支持のマイノリティ(少数派)を標的とした「投票抑圧法」が成立していることがある。彼らの投票権を制限し、投票を困難にして黒人らマイノリティの票を減らす動きが活発化しているのだ。
マイノリティの中には自動車免許証を所持していない有権者がいる。そこで投票の際に、公的な写真入り身分証明書の提示を義務づける。民主党支持者は郵便投票及び期日前投票で投票を行う傾向がある。ならば郵便投票と期日前投票の期間を短縮する。このような州議会共和党の露骨なやり方に対して、バイデン氏は連邦レベルで対抗しようとしているのだ。