「自由投票法案」と「ジョン・ルイス投票促進法案」
自由投票法案は投票をし易くする法案である。例えば、投票日当日に有権者登録が可能になる。郵便投票及び期日前投票の期間を広げる。期日前投票を15日間まで拡大して、少なくとも2回の週末を入れる。加えて投票日を祝日と定める。
一方、ジョン・ルイス投票促進法案は各州が投票に関する法律を変更する場合、米司法省が監督する。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師と共に公民権運動に参加した伝説的人物故ジョン・ルイス下院議員は、「民主主義は状態ではない。行動である」と述べた。つまり、じっとしているのではなく、行動をとることが重要だと言うのだ。
バイデン大統領は演説で故ルイス議員の上の言葉を引用し、「民主主義は偶然発生したものではない。我々はそれを守るために戦い、強固にして再生しなければならない」と米国民に訴えている。余談だが、戦後米国から民主主義を与えられた日本人にはこのような意識はかなり薄いのではないだろうか。
バイデン大統領は共和党が導入した「投票抑圧法」について、「米国人らしくない。民主主義らしくない。愛国心がない」と指摘した上で、「悲しいことに(投票抑圧法は)例外ではなくなってしまった」と率直な感想を語った。バイデン氏には投票抑圧法が権威主義に映っているのだ。
バイデンの支持率と「浮沈の人生」
22年の中間選挙を念頭にバイデン大統領は、「より良い再建」法案が成立すれば、歴史的黒人大学(HBCUs: Historically Black Colleges and Universities)に100億ドル(約1兆1400億円)の補助金を割り当てることができると、黒人の若者に訴え掛けていくだろう。その狙いは支持基盤である黒人票の獲得にある。
加えてバイデン大統領は「自由投票法案」と「ジョン・ルイス投票促進法案」の成立にエネルギーを注ぎ、有権者にアピールしていくだろう。バイデン氏は中間選挙で黒人票と大卒白人女性票を獲得するための効果的な選挙戦略として両法案を位置づけていることは確かだ。
「支持率は上がったり下がったりするものだ」。バイデン大統領はホワイトハウスの記者団から支持率について質問を受けると、決まってこう答える。バイデン氏のこれまでの人生そのものが「浮沈の連続」であった。
バイデン氏はクリスマスのショッピングに出かけた最初の妻と娘を1972年12月、交通事故で亡くした。
16年の大統領選挙に向けて出馬の準備を着々と進めていたが、前述したボー氏が15年脳腫瘍で亡くなり出馬を断念した。
「浮沈の人生」を経験してきたバイデン大統領は支持率低下に関して、米メディアが騒いでいるほど気にかけていないフシがある。高校生まで吃音症に苦しみ、それを克服したバイデン氏は粘り強く法案の成立を目指していくだろう。
仮にバイデン氏の最終目的地が民主主義の擁護にあるならば、22年は「より良い再建」法案から「自由投票法案」と「ジョン・ルイス投票促進法案」に軸足を移していくかもしれない。