米国民の意識の変化
ウクライナへの派兵に関して、米国人の意識に変化がみられる。今回のエコノミストとユーゴブの共同世論調査では、「ロシア兵と戦うためにウクライナへ兵士を派兵する」という声明について、51%が「悪い考え」と回答した。
米国民はウクライナへの米軍兵士派兵に否定的だ。だが、前回の同調査では「悪い考え」が55%であったので、4ポイント減少した。
20年米大統領選挙でバイデン氏に投じた支持者では、前回の調査結果と比べると、こちらも派兵反対派が4ポイント減った。トランプ氏に投票した支持者では8ポイント減少している。
党派別もみてみよう。ウクライナへの派兵反対が民主党支持者は5ポイント、共和党支持者は7ポイント、無党派層は2ポイント低下した。
逆に派兵を「良い考え」と回答した米国民は20%で、前回と変わらなかった。ところが、「分からない」が26%から29%へ3ポイント増加した。20年にバイデン氏に投票した支持者、トランプ氏に投じた支持者、民主党支持者、共和党支持者並びに無党派層においては「分からない」が3~8ポイント増えた。
これまでウクライナへの米軍兵士派兵に反対の立場をとってきた米国民は、連日ウクライナの悲惨な状況の映像を目にして、派兵に関して迷いが生じたのだろう。今後、「分からない」と回答した米国民の意識の変化を注視したい。
バイデンの退役軍人に対する思い
バイデン大統領がウクライナへの米軍兵士派兵に反対の考えを示している理由の一つに、退役軍人に対する熱い思いがある。米議会で3月1日に行った一般教書演説に、この思いが溢れていた。
バイデン氏はイラクとアフガニスタンで退役軍人が廃棄物を焼却した際、有害ガスを吸い込んだ問題を取り上げた。イラクで米軍が140万トンもの廃棄物を燃やしたとき、退役軍人が有毒ガスにさらされたといわれている。
イラク従軍で帰国後、脳腫瘍で亡くなったバイデン氏の長男ボー氏もその1人だ。退役軍人の中には帰国後、ボー氏のようにガンを患う者が少なくない。
だが、イラクやアフガニスタンで吸い込んだ有毒ガスとガンの因果関係は証明されていない。そのため、退役軍人は米退役軍人省に医療と給付を申請しても、却下されてしまうケースが発生している。
そこで、バイデン大統領は因果関係が証明されなくても、退役軍人に対する医療と給付の拡大の資格を取得できるようにすると約束した。ホワイトハウスでの演説では、バイデン大統領は因果関係を見つけ出すと語気を強めた。
退役軍人への支援の重要性を主張するバイデン氏が、ウクライナへの若者の米国人兵士派兵に慎重であるのは理解できる。