「良き共和党」へのノスタルジア
これに対して、ジョー・バイデン米大統領は支持者に対して、「私は保守主義に対して敬意を払っている。だが、今の共和党は皆さんのお父さんやお爺さんが知っている共和党とは違う」と述べた。亡くなったボブ・ドール元上院議員(中西部カンザス州)やジョン・マケイン元上院議員(西部アリゾナ州)が現職であった頃の「良き共和党」から、トランプ氏によって全く異質な党に変化してしまったと言いたのだろう。
バイデン氏は現在の共和党は相手と妥協点を探らないと捉えている。以前は立場が違っても民主・共和党両党の議員は一緒にランチをしたと言う。代表的な議員として名指しを避けながらも、「南部テキサス州の共和党上院議員」を挙げた。テッド・クルーズ上院議員を指していることは明らかだ。
加えて、バイデン氏はMAGAを米国史において「最も過激な政治組織」とレッテルを貼った。「ウルトラ-MAGAアジェンダ」が作った「民主党と巨大テクノロジー企業VS.キリスト教徒とユダヤ教」という対立構図を指摘しているのだろう。
「信任投票」から「選択」へ
バイデン大統領はスコット上院議員が公表したウルトラ-MAGAの計画では、約7500万人の米国民を対象に増税を行うと述べた。年収10万ドル(約1290万円)以下の95%以上の米国民が増税対象になると説明した。従って、ウルトラ-MAGAの計画は労働階級を貧困にすると言うのだ。
さらに、バイデン氏は自身のツイッターにスコット上院議員主導の共和党の計画では、「610万人の中小企業経営者を対象に増税をする。売り上げが5万ドル(約650万円)以下の82%の中小企業経営者を含む」と投稿した。「50%の中小企業経営者に対して平均で年間1200ドル(約15万5000円)を税額に上乗せして課税する」ともつぶやいた。
一方で、バイデン氏は20年米大統領選挙において年収40万ドル(約5170万円)以下の米国民に対して1セントも増税しないという公約をした。その公約を果たしている。
米中間選挙は大統領に対する「信任投票」である。だが、バイデン氏は11月8日の投開票日に向けて、ウルトラ-MAGAアジェンダは「増税計画」であるという議論を展開している。その上で、「民主党かウルトラ-MAGAか」「民主党かMAGA共和党か」と有権者に問いかけ、「信任投票」から「選択」に置き換える選挙戦略をとっている。この点は決して看過できない。