2022年9月27日(火)

2024年米大統領選挙への道

2022年8月16日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプ邸家宅捜索と中間選挙」である。米連邦捜査局(FBI)は8月11日、ドナルド・トランプ前大統領の南部フロリダ州にある邸宅「マーラ・ア・ラーゴ」を家宅捜索し、最高機密文書を押収したと発表した。FBIによるトランプ氏に対する刑事捜査は、本格化しているとみてよい。

 果たしてトランプ大統領は、刑事責任を免れることができるのだろうか。24年米大統領選挙への出馬にどのような影響を及ぼすのだろうか。そして、今後どのような展開になるのだろうか――。

(Racide/gettyimages)

刑事責任の可能性

 米紙ワシントン・ポスト電子版は8月12日、FBIがトランプ前大統領の邸宅から「最高機密(Top Secret:TS)」と記された4点の文書を含む11点の機密情報を押収したと報じた。米ABC ニュースによれば、その中には最高機密よりも1段階上の「機密隔離情報(Sensitive Compartmented Information: SCI)」が1点含まれているという(図表)。機密情報隔離施設のみでアクセスできる情報である。おそらく核兵器関連文書ないしテロリズム関連文書を指しているのだろう。それらが機密情報隔離施設ではなく、リゾート地マーラ・ア・アラーゴに保管されていたのだ。

 トランプ前大統領には、国家安全保障に極めて重要な国防情報の無権限者への共有を禁じた「スパイ防止法」違反、公文書の不法持ち出しおよび、公文書の意図的な破棄や隠避による捜査妨害を含む3件の法律違反の疑いがある。

 米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は同月13日、トランプ氏の法律顧問が今年6月、すべての公文書をFBIに提出したと明記した文書に署名をしたと報じた。仮にこの報道が真実であれば、トランプ前大統領はホワイトハウスから持ち出した公文書を隠避したことになる。

 トランプ氏は18年、機密情報を持ち出した場合、軽罪から重罪に引き上げる法案に署名した。仮に有罪となれば、最高5年の実刑判決を受ける可能性がある。同氏は自らが署名した法律で罰を受けることになるのだ。

 ホワイトハウスから持ち出した文書が機密情報でなくても、トランプ氏は刑事責任を問われる。ということは、同氏が刑事責任を免れるのは難しいのではないだろうか。

トランプ出馬のタイミング

 ではトランプ前大統領はFBIによる犯罪捜査が本格化する中で、いつ大統領選挙の出馬宣言を行うのか。トランプ氏はそのタイミングを探っていることは確かだ。

「中間選挙前」「年内」および「23年春」の3つに分類できる。仮に刑事訴追の可能性が高まれば、トランプ氏は11月8日の中間選挙前に出馬宣言を行うかもしれない。

 ただ、共和党幹部や共和党議員はトランプ氏の選挙前の出馬宣言に、必ずしも肯定的な見方をしていない。なぜならば、彼らは今回の中間選挙で、米国民の目を物価高騰に向けさせたいからだ。トランプ氏が選挙前に出馬宣言をすれば、米メディアは同氏の言動に焦点を当て、米国民もそれに高い関心を示し、その結果、民主党に有利に働く。共和党はこれを懸念しているのだ。

 逆に、FBIが上の3件に関して法律違反があったと結論を下し、先手を打って刑事訴追を行えば、トランプ氏は将来公職の座に就くことを禁じられることになるかもしれない。同氏がこの点を重視すれば、24年米大統領選挙の約1年半前の23年春まで出馬宣言を引き延ばす可能性は低い。となると、やはり年内に出馬宣言をするのだろうか。

 いずれにしても、トランプ氏はFBIの捜査状況を注視しながら出馬宣言の日を決定することは間違いない。FBIとの駆け引きが始まったのだ。

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