2024年11月25日(月)

2024年米大統領選挙への道

2022年8月26日

退役軍人と若者票

 インフレ抑制法案の前に成立した「退役軍人ヘルスケア法案」は、米軍がイラクやアフガニスタンで燃やした廃棄物から出た有毒ガスを吸って頭痛、痺れ、めまいやガンを発生した退役軍人に給付金を出す法案である。例えば、有毒ガスが原因で死亡した退役軍人の妻と2人の子どもには、月2000㌦(約27万円)が給付される。この法案は明らかに退役軍人と家族の支持を得ることになる。

 加えて、バイデン大統領は8月24日、学生ローンの返済免除を表明した。ホワイトハウスによれば、4300万人の借り手が恩恵を受け、約2000万人の債務が全額免除となる。

 具体的には個人の年収が12万5000㌦(約1700万円)および世帯所得が25万㌦(約3400万円)以下の借り手を対象に、1万㌦(約137万円)の学生ローンの返済免除をする。連邦補助金(ペル・グラント)の受給者には、1人当たり最大2万㌦(274万円)の免除を行う。バイデン氏は20年米大統領選挙の公約を順守した。

 演説の中で、バイデン大統領は学生ローンの債務を抱えている黒人およびヒスパニック系(中南米系)の若者の救済に言及した。彼らは女性やLGBTQ(性的少数派)と共に、バイデン氏の支持基盤である「異文化連合軍」を形成している。学生ローンの返済免除は確実に、黒人やヒスパニック系の若者の票を獲得するだろう。

 このように、バイデン氏は中間選挙および大統領選挙に向けて着々と反撃体制を整えている。インフレ抑制法案、退役軍人ヘルスケア法案並びに学生ローンの返済免除が効果を発揮して、票に結び付けば、24年大統領選挙で民主党大統領候補は共和党大統領候補に対して有利になる可能性がある。

決め手は「3州」

 秋の中間選挙では上院で勢力図がどのように変わるのかに、特に注目が集まっている。現在、米連邦上院議員議席数は定員100に対して、民主・共和50対50で拮抗しているからだ。上院の改選議席数は35議席(内訳:民主党14議席、共和党21議席)である。

 決め手は、東部ペンシルべニア州、中西部オハイオ州および南部ノースカロライナ州の3州だ。というのは、これらの3州では現職の共和党議員が出馬しないため、いわゆる「オープンシート」(両党候補とも新人)になっているからだ。以下で、バイデン氏率いる民主党が上院で何議席を獲得できるのか、シミュレーションをしてみよう。

 バイデン大統領は、上院で2議席の上乗せをしたいと語っている。上の3州の内、2州で勝利して、52議席獲得を目標に掲げている。バイデン氏と民主党が法案成立を目指すとき、身内のジョー・マンチン上院議員(南部ウエストバージア州)とクリステン・シネマ上院議員(西部アリゾナ州)の2人が造反する可能性があるからだ。

 米世論調査サイト「ファイブサーティーエイト」によれば、上の3州の内、民主党候補はペンシルべニア州のみでリードしている(日本時間8月25日時点)。ということは、民主党はオハイオ州とノースカロライナ州を除く他の14州で取りこぼしをしなければ、51議席を獲得して上院で多数派を維持できる。20年米大統領選挙でバイデン氏はトランプ氏に対して、民主党議員の改選の対象となっている14州全てで勝利した。

 民主党はペンシルべニア州で勝ち、14州で1議席を落としても50議席を確保できる(図表2)。同党が上院で多数派を維持できる可能性が高まっている。


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