2024年12月22日(日)

2024年米大統領選挙への道

2022年10月27日

 今回のテーマは「米中間選挙終盤戦 トランプへの召喚状とウクライナを巡るバイデンの懸念材料」である。2021年1月6日に発生した米連邦議会議事堂襲撃事件を調査している下院特別委員会は22年10月21日、ドナルド・トランプ前大統領に対して宣誓証言と文書提出を求める召喚状を送付した。なぜ、このタイミングで同委員会はサプライズともいえる行動に出たのか。

 また、中間選挙では外交政策は主要争点になっていないが、投開票の結果、トランプ氏が推薦する多数のMAGA候補(Make America Great Again:米国を再び偉大に)が当選した場合、ウクライナを巡りジョー・バイデン大統領はある懸念を示している。その懸念とは何か――。

23日、テキサス州ロブスタウンで集会を行ったトランプ前大統領(REUTERS/AFLO)

召喚状の狙い

 下院特別委員会は召喚状の中で、トランプ前大統領に対して11月4日までに文書提出と、同月14日頃に宣誓証言を要求した。米政治専門紙ザ・ヒル(電子版)によれば、米国では過去にジョン・タイラー、セオドア・ルーズベルト、ウィリアム・ハワード・タフト、ハーバート・フーバー、ハリー・トルーマン、ジェラルド・フォードといった元大統領が議会証言を行った。米議会の召喚状には法的効力があるので、応じなかった場合、議会侮辱罪で有罪判決を受けて収監される可能性がある。

 しかし、トランプ前大統領は下院特別委員会の召喚に応じないというのが大方の見方である。宣誓証言を行えば、偽証罪で問われるリスクが伴うからである。さらに、11月8日の中間選挙において、下院で共和党が多数派を奪還する公算が高いからである。仮にそうなれば、来年1月に民主党主導の同委員会は解散し、共和党は召喚状を無効にするだろう。トランプ氏にとって下院共和党の勝利が不可欠になった。

 では、なぜ与党民主党率いる下院特別委員会は、このタイミングでトランプ前大統領に召喚状を送ったのか。同委員会は政治的動機付けを否定しているが、中間選挙を前に「オクトーバーサプライズ」を狙ったフシがある。少なくとも、米国民の目をインフレからトランプ氏に向かわせる意図があったことは確かだ。

 米NBCニュースの世論調査(22年10月14~18日実施)によれば、米国が直面している最も重要な争点に関して、30%の民主党支持者が「民主主義に対する脅威」を挙げた。「中絶」は15%で2位であった。トランプ前大統領への召喚状は、オクトーバーサプライズとしての効果は低いが、民主党の支持基盤を投票所に動員させる力になるだろう。

未公開映像公表の意図

 9回目の公聴会において下院特別委員会は、ナンシー・ペロシ下院議長が米連邦議会議事堂を襲撃するトランプ支持の暴徒に対応する未公開映像を公表した。この映像の中で、ペロシ議長は「(選挙人を確定する)手続きを終わらせないと、暴徒の完全勝利になってしまう」と強調し、民主主義を擁護する固い決意を示している。 

 また、マイク・ペンス副大統領(当時)と連絡を取り合い、結束して危機を乗り越えようとしているペロシ議長の姿が描かれている。民主主義が危機的状況に直面しているとき、トランプ大統領(当時)ではなく、ペロシ氏がリーダーシップを発揮していたのである。映像は映画製作者であるペロシ議長の娘アレキサンドラ・ペロシ氏が撮影したものであり、臨場感に溢れている。   

 ただ、このタイミングでの未公開映像の公表にも下院特別委員会の意図がありそうだ。ホワイトハウスのテレビで米連邦議会を占拠する暴徒の様子を観察していたトランプ前大統領と、ペンス氏と協議して危機的状況に対処しているペロシ議長を比較する狙いがあったとみていよい。加えて、暴徒に対して即座に行動を起こさなかったトランプ氏の責任を問い、召喚状を正当化する狙いもあるだろう。


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