オハイオ州の優先順位低下
中西部オハイオ州では、連邦下院議員のティム・ライアン候補と、トランプ氏推薦の小説家でベンチャーキャピタリストのJ・D・バンス候補が熾烈な戦いを繰り広げている。にもかかわらず、バイデン大統領と民主党幹部は、ライアン候補に対して積極的に資金援助を行わない。民主党にとって同州の優先順位が低下しているのは明らかだ。一体、何が原因なのか。
第1に、ライアン候補はTV討論会でバイデン氏の再出馬を支持しないと断言した。その上で、カマラ・ハリス副大統領の移民政策は失敗だと言い切った。バイデン政権批判を展開しているのだ。
第2に、民主党はオハイオ州よりも南部ノースカロライナ州と中西部ウィスコンシン州に将来の可能性をみている。20年米大統領選挙においてバイデン氏はオハイオ州で、トランプ氏に8.1ポイント差で敗れた。ノースカロライナ州も落としたが、わずか1.3ポイント差であった。ウィスコンシン州では0.63ポイント差であったが、勝利を収めた。
第3に、前回の大統領選挙でバイデン大統領は、オハイオと南部フロリダの2州を落としても、当選に必要な選挙人270を獲得できた。バイデン氏は、オハイオとフロリダ両州の選挙人なしに勝利したジョン・F・ケネディ氏以来の大統領である。
次の大統領選挙で民主党大統領候補は、オハイオ州とフロリダ州の選挙人を含めないで選挙人270を獲得できる選挙戦略を、選択肢の中に入れることが予想される。そして、オハイオ州よりもノースカロライナ州とウィスコンシン州に政治資金を投入する可能性が高い。
ウクライナと議会下院選
バイデン大統領は東部ペンシルべニア州フィラデルフィアでの民主党主催のレセプションで、「共和党は自分たちが中間選挙で勝利したら、ウクライナに対する資金援助を継続しない可能性があると語った」と明かした。米紙ワシントン・ポストによると、バイデン氏は「(ウクライナへの支援は)ウクライナだけの問題ではない。東ヨーロッパの問題でもある。NATO(北大西洋条約機構)の問題でもある。大変深刻なことだ」と、MAGA共和党の今後のウクライナ政策に強い懸念を示したという。
雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴが全国を対象に行った共同世論調査(22年9月24~27日実施)によると、全体の19%がウォロディミル・ゼレンスキー大統領に「好感を持っていない」と回答した。ところが、20年米大統領選挙でトランプ氏に投じた有権者は29%まで増加する。トランプ支持者は全体よりも、ゼレンスキー大統領に対する非好感が10ポイント高い。
また同調査では、ウクライナ難民に関して、全体で24%が「受け入れるべきではない」と答えた。一方、20年にトランプ氏に投票した有権者の38%がウクライナ難民受け入れに反対で、全体よりも約15ポイントも上回った。MAGA候補を応援するトランプ支持者は、ゼレンスキー大統領やウクライナ難民に対して必ずしも肯定的ではない。