鍵を握る「郊外の有権者」と「ヒスパニック系」
デサンティス氏は田舎に加えて、勝敗の鍵を握る郊外の有権者からの好感度も高い。エコノミストとユーゴヴの共同世論調査では、郊外の有権者の44%が同氏に「好感が持てる」、39%が「好感が持てない」と回答し、好感が非好感に5ポイント差をつけた。都市部の有権者においては、好感が非好感を9ポイント引き離した。
また、デサンティス知事がヒスパニック系に強い点も看過できない。デサンティス氏は22年フロリダ州知事選で、ヒスパニック票の58%を獲得した。特にキューバ系は68%、プエルトリコ系は56%の得票率を得た。その結果、民主党の地盤であるマイアミ・デイド郡からヒスパニック系の票を奪うことに成功した。
ヒスパニック系獲得の役割を担ったのが、キューバ系のジャネット・ヌニェス副知事である。ヌニェス副知事はマイアミ出身で地元のフロリダ国際大学を卒業した。米NBCニュースによれば、デサンティス陣営はヒスパニック系の共和党有権者登録者数を、64万49人(20年)から69万7911人(22年)に増やした。約5万8000人の増加である。
ちなみに、フロリダ州におけるヒスパニック系の民主党有権者登録者数は94万7853人(20年)から90万1481人(22年)に減少した。一方、同系の無党派の有権者登録者数は87万9984人(20年)から96万6795人(22年)に増加した。
ヒスパニック系の共和党有権者登録者数は、民主党と無党派層と比較すると確かに少ないが、デサンティス陣営はヒスパニック系の得票率で民主党のクリスト陣営に勝った。ということは、ヒスパニック系の共和党有権者と無党派層を投票所に向かわせたことになる。
一部のヒスパニック系は、民主党が頻繁に使用する「進歩的(progressive)」という言葉に「社会主義」のイメージを重ね合わせていると言う。中でも、キューバ系は社会主義に拒否反応を示す。
デサンティス氏が24年米大統領選挙に出馬し、共和党予備選挙を勝ち抜けば、民主党大統領候補に対して進歩的という言葉を連呼して、ヒスパニック票の獲得を狙うと予想される。同氏は、トランプ氏並びに民主党大統領候補の双方にとって手ごわい相手になることは確かだ。