2024年4月27日(土)

2024年米大統領選挙への道

2023年1月1日

「映像の力」と「トランプの責任」

 米国民にとって16年米大統領選挙におけるトランプ陣営とロシアとの共謀、即ち「ロシア疑惑」を理解するのは容易ではなかった。その一つの理由は、ロシア疑惑の可視化が困難であったからだ。

 一方、21年1月6日に発生したトランプ支持の暴徒による米連邦議会議事堂襲撃事件の映像は、テレビやネットで繰り返し流され、その日に何が起きたのかを米国民に改めて思い起こさせる。特に襲撃の場面は、米国民の脳裏に焼き付いて離れず、彼らにとって記憶に残る歴史的な事件になった。「映像の力」は多大であると言える。

 トランプ前大統領によるホワイトハウスからの機密文書持ち出しに関しても、米国民は同前大統領の私邸マーラ・ア・ラーゴにあった機密文書の一部を、映像を通して見ることができた。映像の力は世論調査結果に及ぼしているようだ。

 前で紹介したエコノミストとユーゴヴの共同世論調査によれば、議事堂襲撃事件に関して、米国民の56%が「決して忘れるべきではない」、39%が「前進すべきときだ」と回答した。議事堂襲撃事件を過去の事件として捉えて、「未来に向かって進むべきである」という考え方をする米国民は少数派だ。

 また、64%がトランプ前大統領に「責任がある」、33%が「責任がない」と回答した。「責任がある」が「責任がない」を31ポイントも上回った。「トランプ前大統領は20年米大統領選挙の結果を覆そうとして罪を犯した」という声明に対しては、50%が「はい」、42%が「いいえ」と答え、「はい」が「いいえ」を8ポイントリードした。

 さらに、トランプ前大統領の機密文書持ち出しについて、50%が「意図的である」、22%が「偶然の見落とし」と答え、「意図的」が5割を占めた。同前大統領の「刑事責任を問われるべきか」との質問に対して、45%が「はい」、34%が「いいえ」と回答した。

 USAトゥデイ紙の世論調査(22年12月3~7日実施)では、「米司法省がドナルド・トランプ前大統領を捜査するために、特別検察官を任命したことに賛成か反対か」という質問に対して、51%が「賛成」、44%が「反対」と答え、「賛成」が「反対」に7ポイント差をつけた。その背景には、「トランプ氏の刑事責任を問われるべきである」という世論の明確なメッセージが込められているとみてよい。仮に「トランプ刑事訴追」となれば、「トランプ離れ」の加速は避けられないかもしれない。


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