バイデンは刑事責任を問われるのか?
ガーランド司法長官は、「公平性」に訴えるために、トランプ前大統領とバイデン大統領の双方に対して、特別検察官を任命した。しかし、本当に公平な任命だろうか。
ガーランド氏は、トランプ前大統領の違法性を捜査するために、オランダ・ハーグの首席検察官ジャック・スミス氏を任命した。スミス氏は無党派に有権者登録している。
一方、ガーランド氏は上司であるバイデン大統領に、トランプ前大統領が指名した南部メリーランド州の元連邦検事ロバート・ハー氏を任命した。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によれば、ハー氏は共和党に有権者登録している。
東部バーモント州における昨年の共和党上院予備選挙で、ハー氏は、クリスティーナ・ノラン候補に500ドル(約6万4000円)の献金を行った。08年米大統領選挙では、共和党のジョン・マケイン大統領候補に201ドル(約2万5000円)の献金をした。
トランプ前大統領の特別検察官は、無党派であるのに対して、バイデン大統領の特別検察官は、共和党員なのだ。同紙は、バイデン大統領とガーランド司法長官の2人の良好な人間関係に変化が生じているのではないかと報じた。
これに関して筆者は、ガーランド司法長官の戦略だとみている。バイデン大統領を刑事訴追するのかの最終判断を下すのは、ガーランド氏だ。
ハー特別検察官は、捜査結果を踏まえてガーランド長官に勧告を行う。ハー氏が、バイデン大統領に「刑事責任はない」と勧告し、ガーランド氏が「刑事責任を問わない」と判断を下したとしよう。
もちろん、MAGAは、この判断に反発する。そのとき、ガーランド長官は、トランプ前大統領に任命された共和党員の元連邦検事の勧告に基づいて、判断を下したというメッセージを送るだろう。
逆に、ハー特別検察官が、バイデン大統領に「刑事責任がある」とガーランド長官に勧告した場合、同長官はどのような判断をするのか。米司法省の慣例に従えば、現職大統領を刑事訴追しない。一般市民ではないバイデン氏は、刑事責任を問われる可能性は低い。
機密文書持ち出し問題は、短期的にはバイデン大統領に政治的ダメージを与えるが、長期的に見れば、致命的なダメージにはならないかもしれない。