米国民は機密文書持ち出し問題をどうみているのか?
しかし、ホワイトハウスおよびスタバノウ上院議員のメッセージは、米国民に浸透していないようだ。雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(23年1月14~17日実施)によれば、米国民の39%がバイデン大統領の機密文書持ち出しは「意図的である」、28%が「意図的でない」と回答し、「意図的」が「非意図的」を11ポイント上回った。
また、機密文書持ち出しに関して、「バイデン大統領とトランプ前大統領のどちらがより深刻な法律違反を犯したか」という質問に対して、40 %が「同じ」、28%がトランプ氏、15%がバイデン氏と答えた。米国民の4割が、両氏が持ち出した機密文書の数が、大きく相違するのにも拘わらず、法律違反の深刻度を同レベルで見ているのだ。バイデン氏にとって、この点も課題である。
さらに、昨年の中間選挙(11月8日)後に上昇したバイデン大統領の支持率が低下した。中間選挙直前のエコノミストとユーゴヴの共同世論調査では、バイデン氏の支持率は45%であった。今月8~10日に実施した同調査の結果をみると、バイデン大統領の支持率は50%に達した。
ところが、今月14~17日の同調査では、3ポイント減少し、47%であった。バイデン氏の機密文書持ち出しに関する連日の報道と、トランプ前大統領を支持するMAGA(マガ Make America Great Again 米国を再び偉大に)共和党の攻撃が、支持率に影響を与えたとみていよい。
「意図的」「非協力的」のトランプ
エコノミストとユーゴヴの調査では、バイデン大統領の機密文書返却に関して、40%が「協力的である」、17%が「協力的ではない」と回答し、「協力的」が「非協力的」に対して23ポイント差をつけた。米国民は、バイデン氏の捜査対応を評価している。
一方、トランプ前大統領については、50%が「意図的である」、24%が「意図的でない」と回答し、26ポイントも「意図的」が「非意図的」をリードした。また、29%が捜査に「協力的である」、39%が「協力的でない」と答え、「非協力的」が「協力的」に対して10ポイント差をつけた。
今後もバイデン大統領は、機密文書持ち出しは「意図的ではない」と強調し、米司法省、連邦捜査局(FBI)並びに特別検察官に協力する姿勢を米国民に見せて、トランプ前大統領との相違を鮮明にする戦略をとることは間違いない。自分が犯したミスに対して、米国民に「誠実なバイデン」と「不誠実なトランプ」という印象を与えて、世論を味方につける戦略である。
幸いなことに、バイデン大統領が持ち出した機密文書の写真は、まだ公開されていない。一方、米国民は、マーラ・ア・ラーゴにある「45オフィス(45は45代米大統領トランプ氏を指す)」と思われるトランプ前大統領のオフィスの床の上に、機密文書が置かれている写真を繰り返し見ている。この写真が、トランプ前大統領にマイナスのイメージを与えている点は看過できない。