2024年5月6日(月)

2024年米大統領選挙への道

2023年5月4日

オバマとバイデンのヒスパニック系対策

 オバマ元大統領は12年6月、幼児期に親に連れられて入国し、米国に暮らす不法移民の若者に対して、長期の滞在許可を与える大統領令に署名した。この移民救済制度はDACA(ダカ:Deferred Action for Childhood Arrivalsの頭文字)と言われ、このプロジェクトに登録した若者は「ドリーマー」と呼ばれる。同元大統領は、「犯罪歴のない不法移民の若者は、米国経済や職場、学校および地域社会に貢献している」と高く評価した。

 当時、筆者は研究の一環として南部バージニア州フェアファックスにあるオバマ選対に入り、標的になっている有権者を対象に戸別訪問を実施していた。選対でインターンをしていたヒスパニック系の女子学生が、南部テキサス州にいる不法移民の従弟が強制送還されないために、「オバマ草の根運動」に参加したと語っていたのを鮮明に覚えている。

 オバマ元大統領はこの移民救済制度によって、ヒスパニック系の支持を確実にし、同系において得票率71%を獲得した。ちなみに、ライバルの共和党大統領候補であったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事は、ヒスパニック系の得票率が27%であった。オバマ氏はロムニー氏を44ポイントも引き離した。

 これに対して、バイデン大統領の20年大統領選挙におけるヒスパニック系の得票率は59%で、38%を得たトランプ前大統領との差は21ポイントであった。仮にロン・デサンティス南部フロリダ州知事が共和党大統領候補になれば、彼はトランプ氏以上にヒスパニック系の票を獲得する可能性が高い。

 雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(23年4月22~25日実施)によれば、ヒスパニック系はバイデン大統領に対して47%が「好感が持てる」、43%が「好感が持てない」と回答した。黒人の間では「好感が持てる」が「好感が持てない」を約50ポイントも上回ったのに対して、ヒスパニック系では好感と非好感の差が、わずか4ポイントである。現時点においてバイデン大統領がヒスパニック系の票で、共和党大統領候補に大差をつけることは困難であるとみて間違いない。

 そこでバイデン大統領は早速、対策をとったのだろう。約60万人のDACAに対して4月13日、低所得者向け公的医療保険制度および、手ごろな医療保険制度(ACA:Affordable Care Act)を通じて、医療保険に加入できる道を開いたのだ。今後も、オバマ前大統領の選挙戦略を手本にして、バイデン大統領はヒスパニック系にメリットを与える大統領令に著名することが予想される。


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